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ラ・ヨローナ ~彷徨う女~の福福吉吉のレビュー・感想・評価

2.5
グアテマラの軍事政権による大虐殺から30年が経ち、当時将軍だったエンリケは虐殺の指導者として裁判にかけられるが無罪になった。大衆の怒号が響く中、屋敷で暮らすエンリケは夜、奇怪な泣き声が聞こえるようになり、恐怖のあまり銃を抜くようになる。屋敷のメイドたちはエンリケを恐れて辞めてしまい、新しいメイドのアルマが急ぎ招かれるが、彼女の周囲で不可解なことが起こり始める。

南米に伝わるラ・ヨローナの伝説と、グアテマラで実際に遭った恐怖の歴史を組み込んだ作品になっており、ストーリー自体はオカルトホラーとして分かるのですが、その本質的な面白さの部分についてはグアテマラの史実に私が不勉強だったため、理解できていなかったと思います。

エンリケやその妻は虐殺について肯定的で傲慢な性格をしており、観ていて憎しみが溜まるホラー的な被害者として良い味が出ていました。しかし、エンリケの娘は虐殺を事実ではないかと疑っており、親とは対照的なキャラクターになっていて良かったと思います。

本作のキー・パーソンであるアルマですが、外見上、可愛らしさと不気味さを併せ持っており、全ての行動が意味不明で不快感を感じるようになっており、観ていて落ち着かない気持ちになりました。

恐怖演出としては、前述のアルマの行動の不気味さに集中しており、怖さとしては緩いものになっています。

最後まで観た感想としては、グアテマラの歴史的背景を知らずに観たことで、なんとなくうわべだけ観た感覚になっていて、いまひとつ面白さを感じることができずに終わってしまいました。

ちなみに、本作と同じ題材を用いている作品として、死霊館シリーズの「ラ・ヨローナ~泣く女~」(2019年アメリカ製作)がありますが、本作と違ってラ・ヨローナの呪いを全面的に押し出す作品としてホラーとしてはシンプルになっています。

(参考)
グアテマラの軍事政権
1960年から36年までグアテマラでは内戦が起きていた。その中でも第26代大統領ホセ・エフライン・リオス・モントが統治した1981年からの3年間、大統領の指揮のもと、政府軍により多くの人間が殺され、行方不明になった。

ラ・ヨローナ伝説
南米に伝わる怪奇伝説。二人の子供と共に夫に捨てられた妻が、子供を溺死させて自らも自殺する。その女性の悲しみが死後も魂となって彷徨い続け、その嘆きの声で人々を怖がらせた。

※公式サイト(https://gaga.ne.jp/lallorona/)を参照しました。
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