ロックウェルアイズ

悪なき殺人のロックウェルアイズのレビュー・感想・評価

悪なき殺人(2019年製作の映画)
4.8
雪が降り頻るフランスの山奥の町で1人の女性が行方不明となった。
事件の関係者は町の人間から遠い異国まで広がり、偶然によって全く関係のなかった人物までもが事件へと結びついていく。

やられた。面白い。
一つの愛が他の愛を呼んで偶然が連鎖していく。
章立てになっており、ひとつひとつのピースが型にはまって大きな物語が構築されていくが、この映画のジグソーパズル、完成はしない。
それぞれの登場人物たちの物語はそれぞれ途中で終わりを迎え、彼らのその後は描かれていない。
そして、ラストのあの展開。
まだまだ終わらなそうな偶然にワクワクしながらの幕引き。
やりすぎとも言える偶然の連発には思わず笑みが溢れた。

正直、悪なき殺人などないと思う。
作中でも実際に手をかけた人物のあの行動は悪ありまくりだった。
不倫とか詐欺とかストーカーとか、寧ろ悪で溢れかえっている。
ただ、この映画は殺人がどうだとか不倫がどうだとか、そういう話ではない気がする。

全く説教染みずに多様性を描ききったのも評価ポイント。
国、人種、愛の形。
昨今、ポリコレがなんたらで作品自体が別物になることもあるけれど、ミステリーというエンタメの中で何気なく多様性を描けるって素晴らしい。

グローバルになった世界では、地球人である以上完全に他人でいることはできないのかもしれない。
人間は偶然には勝てない。
人と人、時間と時間が繋がった時の爽快感が堪らない傑作だった。