また劇場&配信公開の話題作を。
『ハリー見知らぬ友人』でセザール賞を受賞した監督ドミニク・モルが、
幾重にも重なる「偶然」という「必然」を通して、人間の本能と滑稽さを描き切る。
主演は『イングロリアス・バスターズ』『ジュリアン』の、フランスの名優ドゥニ・メノーシェ。
2019年東京国際映画祭にて『動物だけが知っている(仮題)』(英題:Only The Animals)というタイトルで上映され、観客賞と最優秀女優賞(ナディア・テレスキウィッツ)を受賞した。
フランスの人里離れた村で一人の女性が殺された。
この事件を軸に5つの物語が展開し
5人の男女が思いもかけない形で繋がっていく─
『羅生門』的手法のように、同じ出来事が複数の人物の視点で語られるが、
少しずつの時間と、時に大きく場所は異なり飽きさせない。
また互いに言い分が違うことも、
本人たちは何も気づける訳もないような。距離感が良い。
これは『羅生門』から想像するような解釈の違いではない。
その隔たりを語ることで真実に一つずつ繋がっていくのだ。
母の死の悲しみにより精神不安定なジョゼフ
彼と不倫する女、アリス
妻のアリスに隠れてネット恋愛する夫ミシェル
殺されたアマンディーヌが旅先で出会うマリオン
場所は遠く離れたアフリカ・コートジボワールにまで及ぶ。
二つの場所を繋ぐのはフランス語。
章に表れない人物だけ、少し繋がったのかもしれない。
山羊を背中に乗せて自転車を滑走する少年
そして山羊の瞳。
何が起こるんだろうと一気に引き込まれるそのオープニングにタイトル(原題)の意味を感じるが、
それを思い出すのはラストシーン。巧い。
それぞれが埋まらない何かを求めて、人間関係に危うさが漂っている。
その危うさを何かあざ笑っているようなところにブラックユーモアとも呼べない不快感もある。
あまり語れないので端的にいうと
ところどころで「お、おう…」となり
最後は「わーお」ってなった(笑)
面白い、面白いのだけれど、
手放しで好きとは言えない趣味の悪さというか変態性が横たわっている。
(これも褒めてるような褒めてないような)
熱い国から雪の山村へ。
再びこの距離に幾ばくかの爽快感を見出す。
ミスディレクションが売りだとして
邦題はミスリードではあるまい😕
動物だけが正しい。
愛とはないものを与えること。
美が足りない。
2021レビュー#211
2021鑑賞No.448