このレビューはネタバレを含みます
殺人事件を5人の男女の視点から描いた作品。
1つの事件を5人の登場人物の視点から描く事で、少しずつ真実が明かされていく…という羅生門スタイルで作られた本作。
ある出来事を描いたら、次の人物のパートでその裏側を描いたり、意外な人物との繋がりが分かったりと、パズルのピースがハマっていく様な感覚が面白い作品でしたね。
また、大筋となるミステリーだけでなく、登場人物それぞれのドラマも見所となる部分。
「愛とは、ないものを与える事」という台詞が象徴する様に、どのキャラクターも愛という幻想を求めて行動しており、その姿は時に滑稽にも映ります。
印象的だったのは最初に登場した、アリス。
いくら夫との仲が冷めていたとはいえ、浮気相手にあんな暗い男を選ぶか?と思うし、事件を知ってから、やたら悲劇のヒロインぶるのも笑えました。
結果的にアリスは5人の中で、事件からは一番蚊帳の外にいる人物なんですけどね。
全体的に浮気や不倫の話に偏っていて、もうちょっとバリエーションが欲しい気もしましたが、この辺は恋愛の国フランスならではの感覚なのでしょうか。
とはいえ、コートジボワールの青年がSNS型ロマンス詐欺をやっているのは新鮮だったし、その被害者だったミシェルが真犯人である事が分かる展開も見事。
事件から最も遠いと思われた人物が実は犯人だった…というのは、ミステリーの醍醐味だと思うので、良い意味で「やられた~」と思わされましたよ。
雪の降る田舎で起こる殺人事件という事で、映画ファン的には『ファーゴ』を想起するわけですが、人間の欲望とその滑稽さを描くという意味では、内容的にもファーゴに近いものを感じました。
ファーゴの様にシニカルな犯罪コメディーであったり、伏線の回収的な入り組んだミステリーが好きな方には、是非オススメしたい作品です。