TaiRa

わたしの叔父さんのTaiRaのレビュー・感想・評価

わたしの叔父さん(2019年製作の映画)
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デンマークの農家で小津、みたいな。監督が小津キッズらしい。

基本的に台詞が少なく、序盤は淡々と農家の日常生活を描写して行く。その中で繊細に主人公の心情の揺れを見せる。叔父さん役は主演女優のリアル叔父さんとのこと。このヨボヨボの叔父さんがキャラクターとして仕上がっている。老人のスローなムーブというのは、ある意味とても映画的だったりする。動くこと自体が注意を引くので。のたのた歩いてる様だけでも面白い。姪の生い立ちなどが徐々に明かされ、彼女の抱えてる想いが薄っすらと表出して来ると、映画が少しずつ変化し色付く。姪が地味な作業服から一転、お洒落してみたり。普段と違う行いが新しい出会いを生み、姪と叔父のミニマルな生活が変化して行く。この辺りは『晩春』のそれ。叔父が姪に手伝って貰っていたことを、何も言わず一人でやり始める様が切ない。無口で表情も変わらない姪だが、でも確かに何かを思っているのが分かる演出。デート場面はオフビートな笑いをやってて良かった。終盤、画面に映されるコペンハーゲンの街並みが剥き出しの現代で面白かった。展開としては、家族というものが時に人生の足枷になる残酷さと、家族との繋がりの尊さを同時に見せる。姪と叔父が世界との繋がりを失った時、決断を迫らずに映画は終わる。他者の選択、優先順位を否定することは出来ないという了解が今作にはある。それと子牛や猫が可愛かった。
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