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わたしの叔父さんのchidorianのレビュー・感想・評価

わたしの叔父さん(2019年製作の映画)
4.3
滋味のあるスープを飲んで体が温まるような映画だった。

日常を淡々と写すことで、暮らしぶりはもちろん、性格や感情の動きまでが伝わってくる。
姪のクリス役以外はほぼ素人で、本当の叔父さんと獣医さんだったりするらしい。その土地の訛りで話せるからということを優先して選んだと聞いて驚いてしまった。どの登場人物も素晴らしく、さぞや演出が巧みだったのだろうと思いきや、叔父さんにはあえて演技指導はしなかったと。マジか。

悲しかったり可笑しかったりするけれど、何かを主張してくる映画ではなかった。おそらくその辺りのことは観客が思い思いに解釈するということなのだろう。ただ、日本とデンマークの社会情勢の違いなどを踏まえておかないと、読み誤ると思った。そういう意味でパンフレットを読んでよかった。

台詞はとても少ない。効果音もない。カメラはほぼ固定で、いわゆる引きの絵ばかり。それでも泣いたり笑ったりできるんだから、映画って面白い。

静かで地味で、取り扱っている題材からも悲壮感が漂いそうなところだが、全体にカラッとしていて、観終わって温かい気持ちになる映画だった。

ラストについて賛否あるようだが、私はとても好きだ。確かに驚いたが、こういうやり方もあるのかと痛快な気持ちになった。

以下ストーリーに関する余談。

ヌテラ、パンに塗って食べてみたい。

でっかいハンドソープをべーん!って置くルーティンのシーンが好き。

いっつもニュースを垂れ流しているテレビが壊れて間が持たないあの感じ、今風に言うと、わかり味が深過ぎる。

もう一度観たくなってきた。
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