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50人の宣誓のlpのレビュー・感想・評価

50人の宣誓(2019年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

アジアの未来からイランの『50人の宣誓』。
コンペに出品された『ジャスト6.5』、アジアの未来に出品された『死神の来ない村』と今作。今年コンペ系の部門に出品された3本のイラン映画の中で、実は最も期待値が高いのが今作『50人の宣誓』だ。
「50人が集まって法廷で宣誓すれば判決を覆せる」。このイラン特有の法制度がテーマと聞いて期待値が急上昇。昨年アジアの未来部門に出品された『冷たい汗』も、イラン特有の文化的背景をテーマにした(そしてそこに激しい会話劇を組み合わせ)傑作だっただけに、今作も大いに期待して鑑賞。期待を裏切らない驚きの1本だった!

50人の肉親による宣誓制度を利用して、亡き妹の敵を討たんとしている姉が主人公。無罪放免となった容疑者の男(死んだ妹の夫)を死刑にすべく、親族一同を乗せたバスが裁判所へと向かう。映画はそのバス車内での様子を映す。

映画前半はそれぞれに事情や遺恨を抱え、足並みが揃わない家族の様子を怒濤の会話劇で描き出す。30人以上の人間が一同に介している状況下で、各キャラクターの個性や事情を手際よく映す手腕に、まずは驚かされると同時に圧倒される。
映画中盤以降は新たなキャラクターの登場や、事件の全体像も徐々に明らかになっていく。会話劇はより一層激しさを増し、話も大きく動いていく。この脚本のドライブは見事だ。

しかしながらその一方で、少し後出しジャンケンの要領で話が進む感があり、物足りなさも感じていた。このまま終わったら嫌だなぁ・・・と、思っていたところで事態は一転。
最後の驚きの展開と、事件の真相を巡るどんでん返しに見事にやられた!荒唐無稽な展開ではあるけれども、ここまで自由にやり切ってくれれば、個人的にはこれはもう「あり」だ。
しかも、ラストのどんでん返しは単なるエンタメ的なサプライズに留まらず、「報復」を巡るドラマを深化させている。この意味合いでも凄い!

これだけ盛り込みながら、上映時間は何と85分!非常にキレ良くまとめられており、これまた見事。宣誓制度に関する質疑が飛び交った上映後のQAも、興味深い一時が過ごせて大満足だ。

昨年のTIFFで上映された『冷たい汗』や、過去にコンペに出品されたイラン映画の大半も、未だ日本では一般公開がされていない状態なので、今作も一般公開は厳しいかもしれないけれど、何とか日本での一般公開を期待したい1本だ。オススメ!
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