スマートに生きる事が格好良いとされる現代社会だからこそ、本作のように、不格好だけども必死に生きている人達を描いた映画にはとても惹かれる。この系譜では、安藤サクラ主演の「百円の恋」やラブホを舞台にした群像劇「さよなら歌舞伎町」が強く印象に残っているけど、デリヘルの事務所を舞台にしたこの「タイトル、拒絶」も、とてもパワフルな作品だ。
舞台劇が原作らしく、劇団の主宰である山田佳奈が自らメガホンを取り劇場作品として公開したらしい。登場人物の大半は女性で、客に対する愚痴が、やがて女同士の嫉妬や嫌悪感を露わにした口喧嘩へと発展していく。基本的には夜の事務所を舞台にしているものの、随所で昼間や室外の様子も挿入され、家族や恋に関するエピソードも入ってくる。
今まさに売れっ子の伊藤沙莉は勿論なのだが、事務所で一番人気の女子を演じる恒松祐里の怪演が凄い。クラスで男子にもてる女子高生役というイメージだった彼女だが、考えてみれば、今泉力哉や白石和彌といった個性の強い監督の作品に抜擢されてきた経緯もあるわけで、今後は更に注目を集める事になりそうだ。
監督が女性である事も関係しているのか、この舞台設定にして裸が出てこないのも凄い。男性監督では持ち得なかった発想だと思う。
タイトルに込められたメッセージが語られるシーンは、どこか「フランシス・ハ」を思い起こさせた。