takato

ラ・ジュテのtakatoのレビュー・感想・評価

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)
4.1
 町山さんが「テネット」解説で、時間が円環となるタイムパラドックス作品の原点として本作を挙げていたので鑑賞。短編小説というよち掌編小説サイズのsfなのだが、そのプロットやテーマより白黒静止画にナレーションが被るだけという構成の方が興味深かった。


 なんの本であったか忘れたが、白黒のスチール写真の方がかえって映像としての訴求力が強いというような記述があって、確かに本作を見ると同意できる。本作が普通にカラーで撮られていたら、こんなに映像が味わい深いものになったろうか?。


 オルテガは、芸術とは現実を非現実化することにあると指摘していたが、写実的に書かれた絵画でもカラー写真やましてや現実に見た映像が与えてくれる感覚とは違うように、映画も現実の形象を残しつつを違う形に変容させることが本質なのかもしれない。


 現実は雑然としていて、始まりも終わりもないまとまりのないものである。それに形式を与えることこそがある意味創作であるが、映像においても現実の知覚とは違う形式を与えた方が、かえって効果的になりうるかもしれない、というような認識感覚の問題を問われているように感じられた。
takato

takato