青山

ラ・ジュテの青山のレビュー・感想・評価

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)
3.8
モノクロで、フォトモンタージュ(いわゆるボラギノールのCMのやつ)の手法を使って撮られた実験的な短編SF。そして内容としては「12モンキーズ」の元ネタにもなっています。そんなん聞いたら観たくなるに決まってるやん!ということで観ちゃいました。イマジカさんありがとう。

まず映像に圧倒されます。映像というか画像ですが......。一枚一枚を作品として出しても大丈夫なくらい美しい写真たち。特に空港で風に髪を靡かせたヒロインは、ジャケ写にも使われてますが幻想的でした。

WWⅢによって地上は人が住めないほど荒廃してしまい、人々は地下に逃げ込みます。
科学者たちは、時間旅行によってこの現状を打開しようとし、人体実験を繰り返しますが、なかなか上手くいきません。
実験台に選ばれた主人公は、史上初めて過去から正常に帰還します。その結果何度も過去に派遣される主人公。
この辺はもう完全に「12モンキーズ」に反映されていますね。

ただ本作の方が時間も短くてかなりシンプルです。そのシンプルな本作の主軸になるのは主人公が幼い頃に見た原風景。
空港で誰かが死ぬ、飛び立つ飛行機、風に髪を靡かせる女性......。
そんな朧げな記憶を頼りに、主人公はその女性を見つけて、過去に行った時だけデートします。
恋愛のようにも見えるけれど母親へのノスタルジーに近いような気もする、不思議な逢瀬が美しいです。

また、オチも非常に綺麗でした。
細かい科学考証とかは抜きにして、一つの風景として綺麗。やはりSFの醍醐味は、サイエンスという理知的で無機的なイメージがあるものから幻想を取り出して視せてくれることだと思います。本作はそもそもあまりサイエンス面が凝ってないですが、幻想的ということではもう最高なので好みドンピシャでした。これだけ書いといてアレですが、言葉では上手く説明できない良さがあります。
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