けんたろう

ラ・ジュテのけんたろうのレビュー・感想・評価

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)
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見るからに怪しいメガネ男が出てくるおはなし。


思い出というのは過ぎ去ってしまったもので、もう二度と手に入らないものだからこそ、とても情緒的で人間的で尊いものなんだろう。少なくとも僕はそう思う。

しかし本作の主人公である男は、思い出(過去)に取り憑かれ、挙句の果てに、過去の中に生を見てしまった。
(ちょっと『ミッドナイト・イン・パリ』と似た香りがするけど、もしかして『ミッドナイト・イン・パリ』は本作から着想を得たのかな。)
そして彼はもう二度と"今"を生きることができなくなってしまった。その光景を見ると、「過去と思い出の区別は難しい」とかいう劇中の理解不能な言葉の真意が少し分かる気がする。
彼がしてしまったのは結局、思い出すということではなかったのだろう。


ちなみに、人はよく思い出を残そうと写真を撮り、それに写った人物やモニュメントを見て昔を回顧するが、本作の手法はそれと巧みに融合しているようで面白かった。

さらに、その何枚もの写真によって作られる映像(フォトロマンだとか言うらしい)は、映画が元来写真の連続活写によるものであることを再認識させてくれた。
この作品をフィルム上映で観られたことはかなり貴重な体験に違いない。早稲田松竹さんには、本当にありがたいばかりだ。