永遠の寂しんぼ

約束のネバーランドの永遠の寂しんぼのレビュー・感想・評価

約束のネバーランド(2020年製作の映画)
1.8
『変えようよ監督』

原作は5巻まで読了。アニメは未視聴。
良い所もあるけど原作の良さや肝の部分を全然引き出せておらず、一部役者の酷い演技や平川監督お馴染みの無駄な感動演出が目立ち、だいぶ不快感のある実写化でした。

============================
まずは良いと思ったところから。
○ギルダがハマり役で上手かった。
原作での彼女の活躍が大幅にカットされているので印象は薄いけど、見た目もそこそこ良いし、演技も上手だった気がした。

○フィルとアンナも結構良い。
名前は分からないけど、この子役さん2人も良かった。アンナは可愛らしいし、フィルも最年少ながら割と良かった思う。(最年少役に最年長役が演技で負けてるってどういう事?😡)

○美術、小道具の作り込みが見事。
GFハウスや神秘的な森はちゃんとファンタジー感が出てて良かった。ハウス内の本棚や物置きなど小道具もちゃんと作り込まれててgood。よくこんなロケ地が日本にあったなーと思った。

○北川景子さんはもちろん文句無し。
流石です。ちゃんとイザベラの怖さ、強さが出てた。北川さんなりに子供組の役者達へのフォローもあったようで素晴らしい女優さんだと思います。

○門にいたSCの2人も流石。見た目はヤベェ事になってたけど。

そして悪いと思ったところ。
●前半端折り過ぎで原作の重厚な心理戦と鬼ごっこが台無し。
原作では年長組3人とママとの重厚で一切手加減の心理戦がとても面白いのですが、雑なダイジェストのせいでそれらがほとんど無いのが酷い。鬼ごっこもエマ達が年下の子供達を脱獄に向けて訓練していく重要な役割がありますが、映画では台無し。ただの鬼ごっこで緊迫感や戦略性がまるで感じられない。

●台詞説明だけで心理描写&映像表現が少な過ぎる
独白がほとんど無く何でもかんでも役者に喋らせてばかり。命を懸けて計画を悟られないよう騙し騙される原作の心理戦をちゃんと再現しようとする気が全く感じられない。監督は原作の何を読んでいたんだ?それ以外もTVドラマの監督らしく台詞ばかりの説明だらけ。映像で映画を作ろうという気があるの?とひどく疑問に思う。特にレイが幼児期の記憶を話すシーンは、その記憶を再現する映像が一つもなく、全部セリフで説明させたので何も面白くない。

●主演3人の芝居じみた演技
レイ役の城桧吏くんは擁護できないくらい酷い。声変わりでは言い訳にならないくらい酷すぎる。アフレコのせいかは分からないけど、声を張るシーンが本当に無理矢理言わされているようでキツイ。あまりにも舞台上での演技みたいで、スクリーン上にいるのにいないように感じるような演技だった。学芸会みたいだった。
ノーマン役の板垣李光人くんは城くんよりはずっと良いがやっぱりお芝居感のある演技の仕方、声の出し方が気になった。
エマ役の浜辺美波は声の演技は良いんだけど、顔の演技(あるいは演技のさせ方かな?)がかなり気になった。年齢改変の上で頑張って原作らしいエマを演じようとしてたのは分かるけど、笑顔がかなり嘘っぽくてだいぶ違和感があった。

●エマの描かれ方
エマという女の子は元気いっぱいで楽観的で現実が見えていない部分もある。でもレイやノーマンに負けないくらい賢くて、自分で考えて行動できる、とても良い主人公だと思います。しかしこの映画のエマは元気で優しい所ばかり強調され過ぎている。本気でイザベラを出し抜き、命懸けで仲間たちと脱獄をしようとする彼女の芯の強さを描いていないのは至極残念。これは浜辺美波ではなく、明らかに彼女の演技のさせ方に問題がある。

●レイのキャラ崩壊&イザベラとの関係の改変?
動揺を顔に出し過ぎたり、感情的に叫んでばかりの城くんの演技(のさせ方)のせいで、本来子供組で一番クールでドライなレイのキャラが崩壊してしまっている。
それと、レイとイザベラは実の親子という設定は映画でも原作通りの筈なのに、なぜかラストでイザベラがそれをボカすような発言をしていたのかが謎。なんならハンガー渡りのシーンで、エマを落とそうとするイザベラにレイが「ママやめてくれ!」とか言わせれば、せっかく追加したラストのイザベラとのやり取りがより深くなったのに。これは本当に謎だった。原作とは違うあのラストシーン自体は良かったのに。

●過剰な音楽
とにかく平川監督の映画はBGMが過剰。BGMで感動シーンをゴリ押しするのは本当にやめてほしい。BGMで雰囲気だけ前に出て役者が置いてけぼり。

●原作にない過剰な感動シーン
原作では内通者と判明したレイとの和解のシーンとノーマン出荷のシーンはあそこまで感動的には描かれていない。記憶屋でもそうだったけど、本当にこの監督は感動演出がクドすぎる。あの余計な感動シーンを入れてる尺があるなら前半の心理戦と鬼ごっこをちょっとでも工夫できた筈だ💢

●クローネ
渡辺直美さんも彼女を起用した監督にもガッカリ。原作のクローネはギャグじみた狂気っぷりがウリのキャラだが、映画版ではただの渡辺直美が出てるだけ。台詞説明ばっかりだし、肝心の鬼ごっこも全然走ってないし、本当に期待外れだった。

●無駄なネタバレ要素
この映画では原作6巻、アニメ版2期以降で判明するGFハウスの外の世界に関する重大なネタバレが二箇所あります。
一つ目が中盤のクローネの台詞。まあこの内容はジャンプ本誌で読んだ約ネバでぼんやり知っていたので大丈夫だった。
二つ目がノーマン出荷時に門にいたSCの男と彼の台詞。これは完全にネタバレくらった💢
この2つのネタバレ要素は脱獄編を描いた本作では必要のない情報ですね。二つ目なんかは特にSCの発表で話題を作りたかっただけな気がします。シーンとして無駄だし、あの俳優さんのコスプレ感が凄まじいし、本当に尺の使い方がおかしい映画だと思います。

============================
結論としては、映画としては良い所も幾らかある。でも約ネバの実写化としては全然ダメ、という印象でした。

そもそもこの実写化企画自体が無謀過ぎます。全員外国人の子供達の大半を日本人に髪を染めて無理矢理演じさせ、役者の都合で原作の年齢設定を変えたせいで、見た目と言動のバランスがキャラによってバラバラ。そうなる事を覚悟した上で可能な限り調整し、演技を統一させようとちゃんと考えて実写化発表したんですかね?
約束のネバーランドらしい物語、約ネバだからこそできるシーンを作ろうとする気概はあったんですかね?

僕には人気漫画を利用して、自分が今まで作ってきた映画の型に無理矢理押し込んで金儲けがしたかったようにしか見えませんでしたよ、平川監督。
できればもうこの人の映画は観たくないですね。