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約束の宇宙(そら)のkei188のレビュー・感想・評価

約束の宇宙(そら)(2019年製作の映画)
1.7
この映画を語る上で、あのシーンを抜きにはできないと思います。

原題はProxima。太陽系から最も近い恒星の名前。火星へ人類を送るプロジェクトの名前。この映画はそのプロジェクトの前段階。火星に行くには片道2年の旅程となります。国際宇宙ステーションの滞在が通常の半年のところ、1年に延長、しかもプロジェクトの宇宙飛行士は地球との交信も断つ、という実験プロジェクト。そのプロジェクトの一人が脱落し、繰り上がりで選ばれたサラ。

娘のステラは8歳、失読症を患っており、学校が苦手。シングルマザーで2人暮らし。ステラは元旦那に預けられる。娘が心配で訓練に全集中できない母との葛藤。育ち盛りの娘は、寂しい環境でも精神的にたくましくなって少しずつ成長していく。サラは幼いころからの夢だった宇宙飛行士を実現の一歩手前で、なんのために自分の夢を実現するのか、目標を見失ってしまい、過酷なトレーニングにもついていけなくなる。

ダイバーシティ(多様性)を強調する宇宙開発、男女、国籍、人種などの垣根なく、進むプロジェクト。というのは名ばかりで、男女や国籍の問題は根が深い。この根深い問題もサラの気力の障害となる。

前置きが長くなりました。この映画の邦題の元となった「約束の宇宙(そら)」。その約束とは打ち上げ前に、サラがステラに自分が搭乗するロケットを見せるというもの。よくよく考えると、この約束は母と娘の行動で実現できるわけがありません。宇宙飛行士は打ち上げ前の一定期間は隔離されます。感染症予防のため。狭い宇宙船やステーションに病気を持ち込むわけにはいきません。ロケットが発射台に取り付けられるのは打ち上げの直前。隔離中なんです。サラがステラを連れて、ロケットを見せることなんてできないのです。

打ち上げの前日の夜、サラは隔離されている施設を抜け出して、打ち上げを見に来たステラたちが宿泊するホテルへ行き、ステラを連れて発射台が見えるところまで連れていきます。
この行為、重大な規律違反です。もし、バレてしまえば、ミッションは中止でしょう。サラは一般人ではありません。フランスの国家プロジェクトの一員のはずです。もし、サラの行動のせいで中止になれば、国際問題化する可能性だってあります。フランスの映画らしく、ラテンのノリといえばそこまでですし、この映画のハイライトではあるけども、この行為が映画の質感をぶち壊した気がしました。

娘は母がいない中、苦手な算数も克服し、友達もでき始めた。そして、約束を守ってくれた母を誇りに思いつつ、打ち上げは成功した。また着実に一歩ずつ成長の階段を上っていくステラ。という希望にあふれた話をぶちこわす、規律違反。約束を果たした母と娘の絆の尊さという感動を伝えたいのは明白です。でも、そんなんないやろ、って思いのまま、打ち上げが成功してしまった。

施設に戻ったサラ。シャワーシーン、サービスカットか。あれも、そんなんないやろ、って感じ。ヨウ素で全部が解決するわけないと思う。やらないよりはましだけど。だったら、隔離なんぞ不要では?

2021年劇場ー39本目