Jun潤

はるヲうるひとのJun潤のレビュー・感想・評価

はるヲうるひと(2020年製作の映画)
3.5
2021.06.15

山田孝之主演×佐藤二朗原作・監督・脚本。
2009年、2014年に上演された舞台を原作に映像化された作品。

とある離島の売春宿を舞台に、経営者兄弟とそこで働く娼婦たちの生活を描く。

今作はなんといっても佐藤二朗ですかね。
これまでのコメディリリーフな役柄から一転、史上最恐の演技を見せてくれました。
「勇者ヨシヒコ」シリーズでのコメディ満載な山田孝之との掛け合いからは想像できない憎まれ口たっぷりの役柄に、目を背けたくても目を離せない強烈な魅力が詰まっていました。
また、そんなキャラの中にも、自らの出自を鼻くそだと言い放ち、両親が死んだ部屋で情事を重ねるなどの弱さも感じ取れました。

そして主演の山田孝之。
若い頃の若い頃の好青年な役、最近演じられたクセのあるメインから脇までの役とはかけ離れた、無精髭を生やし、金髪で、両親の死に様を目の前で見たトラウマを抱え、日常をもがいている弱々しい役柄を表情いっぱいに演じていました。
彼だけが知る両親の死の真相を、誰にも話すことができなかったために、誰も見ていないところで声にならない叫びをするほど、そのトラウマは根深く彼の心に座していたのでしょうね。

今作では個人的に仲里依紗の好演も印象に残りました。
今までの愛嬌たっぷりの役と違って、病床に臥し、アルコールも依存している今にも消え入りそうな役柄でした。
そんなか彼女も、娼婦たちに憎まれ口を叩いたり思いっきり叫んで本心をぶつけるなど、日常にもがいていたんですね。

売春宿で働く娼婦たちは、彼らがもがいていた日常を受け入れ、虚で愛のない行為に身を委ねながら、必死に春を売っていました。
人間の弱さだけでなく力強さも感じる、そんな作品でした。

完全にバイプレイヤーと化した向井理も◎
Jun潤

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