NAO141

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのNAO141のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

〈大いなる力には大いなる責任が伴う〉本作にてスパイダーボーイは真のスパイダーマンとなった!全ての運命が集結する、まさに『スパイダーマン』シリーズの集大成的な作品、それが本作である!

前作のラスト、一人の強烈なキャラクターが再登場した。スパイダーマン最大の敵??とも言えるデイリー・ビューグル(新聞社)の名編集長、J・ジョナ・ジェイムソン(通称:J・J・J)である。しかも演じるのがJ・K・シモンズではないか!!彼はマグワイア版の『スパイダーマン』に登場していたが、突然のホランド版『スパイダーマン』への再登場。しかしこれこそが本作の感動の伏線になっていたとも言える。〈マルチバース〉、「J・K・シモンズが再出演ということはまさか…」、そしてその嬉しい予感は本作にてついに実現したのである!

『スパイダーマン』シリーズは利権が絡み、かなり複雑な状況で製作が行われていることは有名な話である。
1998年にソニーは倒産再建中のマーベルから『スパイダーマン』の映画化権利を獲得し、2002年から2014年にかけて5つの『スパイダーマン』映画を製作している(これがマグワイア版3作品とガーフィールド版2作品)。かなりの人気を獲得したものの、ガーフィールド版『アメイジング・スパイダーマン2』は期待する収益レベルには達せず打ち切りに。この頃マーベルは『アイアンマン』などMCU作品の製作と成功で盛り返しつつあり(途中、マーベルはディズニーに買収されている)。ふむふむ、複雑になってきたぞ笑。『スパイダーマン』の権利をソニーから買い戻したいディズニーと、ドル箱コンテンツを再興させたい(というか手放したくない)ソニーは、2015年に妥協案として次のようなことをしている。『新スパイダーマン(ホランド版)』の「映像化権利と配給はソニー」「製作費はソニー負担」「プロデュースはディズニー」「興収の5%がディズニー、残りはソニー」「グッズ収入はディズニー」「ディズニー製作のMCU作品にスパイダーマン出演」のバーター契約締結。
いやはや、なんとも複雑だなぁ苦笑。
しかしこの契約でスパイダーマンはディズニー製作のMCU作品に登場することが出来るようになり、利権の問題は別として、ファンは大興奮となった!笑。
けれども〈めでたしめでたし〉…とは、ならないのである苦笑。
確かに『アベンジャーズ/エンドゲーム』が歴代興行収入1位になる等ディズニー側も一定の収益を得るが、この契約での実質勝者はソニー。ホランド版『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』は大ヒットとなり、ソニー歴代最高の興行収入作品となった。これに面白くないディズニーがプリッと少し機嫌が悪くなる苦笑。利益配分を巡って両者は決裂となり、2019年にスパイダーマンのMCU離脱が決定的となってしまう。しかしながら、これを回避したのは多くのスパイダーマンファンやキャストの声、そして何より主演のトム・ホランドが両社経営者への仲介を行い、スパイダーウェブにて見事両社を繋ぎ止めたのである!
結果、「ディズニーは製作資金の約25%を負担し収益の約25%を受け取る」「グッズ収入はディズニー」とする新契約が成立。そして製作となったのが本作というわけだ。いや~激しいドタバタ劇である笑。しかし、この企業間の決裂危機を回避したのは『スパイダーマン』という作品を愛したキャストやファンであることも事実。そんなキャストやファンの『スパイダーマン』に対する愛が本作の製作を実現させ、その愛が詰まった作品だからこそ、本作は誰もが感動出来る20年分の『スパイダーマン』の集大成的な作品として完成したのである!拍手!!

ファンの愛でまさかこんな事が実現するとは!サム・ライミ監督版に登場したグリーン・ゴブリン、ドクター・オクトパス、サンドマン。マーク・ウェブ監督版に登場したリザード、エレクトロ。過去のシリーズ全作品のヴィランが時空を超えて登場。しかも当時のキャストがそのまま再出演。これだけでも凄いが、トビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドまで再出演!!これが凄い!!「いつか3人のスパイダーマンが同じ作品で観れたらいいな」、そんなファンの夢がついに実現してしまったのである!
『スパイダーマン』シリーズは20年も製作され続けて来たため、マグワイア版・ガーフィールド版・ホランド版それぞれに熱烈なファンがおり、〈親愛なる隣人スパイダーマン〉は世代によって異なるとは思うが、それぞれの世代のスパイダーマンが一堂に会する夢の共演が我々の胸を熱くしてくれる!

本作は過去作すべてを鑑賞してから観ることを強くオススメしたい。感動レベルが全く変わってくるはずである。本作、マグワイア版・ガーフィールド版それぞれの後日談を描いた形にもなっている。
過去作のテーマ曲の使われ方も秀逸!
マグワイアがガーフィールドに「君はアメイジングなんだ!」という台詞は笑えるし、MJの危機を救うガーフィールドに感動するには過去作を観ないと!笑
何より素晴らしいのはヴィランを倒して終わり、ではなく、そこに〈救い〉があるということ。ここにスパイダーマンらしさを感じることが出来、ほっこりする。とはいえ、本作は完全なハッピーエンドではない。メイおばさんの件やMJ・ネッドから自身の記憶がなくなる事、それはとても辛い事ではあるが、これを乗り越えてスパイダーボーイは真のスパイダーマンになるのだ。胸アツと切なさが絶妙にマッチした本作は傑作!!

今後『スパイダーマン』シリーズがどうなっていくか楽しみである。『スパイダーマン』シリーズだけでなく、マーベルのMCUがどうなっていくかも楽しみ!
本作のラスト、ベノムがこの世界(次元)に残っていることを示唆するようなシーンがある。さらにピーター(スパイダーマン)を救うべく登場したのは盲目の弁護士マシュー・“マット”・マードック。彼の正体はNetflixのドラマで既に大活躍のデアデビル。このシーンはMCUとNetflixの世界観が本格的なクロスオーバーを果たしたとも考えられる。さらに本作に続くMCUの『ドクター・ストレンジ / マルチバース・オブ・マッドネス』ではなんと『X-MEN』からあの御方が登場したではないか!!ついに、ついに来たのか『X-MEN』の参入が!?さぁ、これからどうなっていくのだMCU。今後もワクワクは続きそうである!!
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