けーすけ

SKIN/スキンのけーすけのレビュー・感想・評価

SKIN/スキン(2019年製作の映画)
3.7
ブライオン・ワイドナーは幼い頃に親に捨てられ、路上生活を送っていた時に白人至上主義グループ“VSC”に拾われ、今やグループの幹部として完全な差別主義者になっていた。顔を含め全身には差別的なメッセージの意味を含めたタトゥーが彫られていた。ブライオンはある日出会ったシングルマザーのジュリーと恋に落ち、グループからの脱却を決めるが・・・




実話に着想を得た物語との事で、そこそこに重い映画でした。暴力描写も多々あります。


ブライオンが「こんな生活から抜け出して、真っ当に生きていきたい」という部分がメインで描かれるのですが、幼少から強烈な差別主義者達の環境下で育ってきており、「そんなに簡単に改心できるのか?」とも思った部分。飼い犬は可愛がっていたし、根っこは優しい人物だったのかな。

そんなブライオンの“転向”には反ヘイト団体の運営者であるダリルという男性の協力もあり、ダリルからの視点も挟まれて映画が重くなり過ぎないような印象を受けました。


また、序盤からブライオンのタトゥーの除去シーンが合間に挟まれ、ブライオンの行く末がある程度明示されているというのもある意味優しい作りかな、と。
ただ、除去の施術は観ていて「アイタタタ…!」という気持ちになるくらい痛々しい。彫るのより除去の方が数倍痛いとかって言うけどどのくらいの痛みなのだろうか。体験はしたくないですが。



タイトルの『スキン』には本作のテーマであるタトゥーや、白人至上主義者の黒人排除の部分が含まれていると思うのですが、「見た目からの差別」もテーマとして含まれているのかもしれないと感じたところです。

ブライオンが好きになるシングルマザーのジュリーには3人の娘がおり、ジュリーはそこそこにふくよかな体形。
正直なところ僕自身「なんでこの人を配役したのだろう」と最初は考えてしまい、「もしや娘に手を出したりしないだろうか」と穿った考えまでしてしまった。

ブライオンはジュリーの事を本当に愛しており、終盤で「あ、見た目で配役云々考えてるって、差別の一つだな」と猛省。


ブライオンも更生の途中でFBIからマークされているといった理由や、そのタトゥーの見た目から仕事にも就けないといった状況に陥ります。
もちろん過去に行ってきた事実は取り消せませんが、見た目だけで全てを判断して決めつけるのは必ずしも正解ではないのかもしれないですね。(それでも見た目での印象って大事なんだろうな…)



ブライオンを演じたジェイミー・ベル、全身にタトゥーが入った役で当然実際に彫るわけにいかないのでタトゥーメイクですが、メイク大変だったろうな、という出来栄え。見どころです。

あと、ジュリーの娘役が3人とも可愛いのでそこも癒し部分でした。



本作が作られるきっかけとなった2018年公開の『SKIN 短編』もあり(第91回アカデミー賞で短編映画賞を受賞)、そちらはかなり衝撃的なラストでしたが、こちらは希望を持たせる作りとなっておりました。

それでも重苦しい空気はあるので、鑑賞は精神が健康な時をおすすめします。観終わってけっこうぐったりしました…。


2021/03/13(土) TSUTAYA DISCAS定額レンタルにて鑑賞。
[2021-027]
けーすけ

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