たかちゃん

SKIN/スキンのたかちゃんのレビュー・感想・評価

SKIN/スキン(2019年製作の映画)
3.9
現在アメリカでは、5月末にミネソタ州ミネアポリスで警察官が黒人男性を死亡させたとして、全米各地で抗議デモが続いており、その波は世界各国に広がっている。本作は差別意識が環境に左右され、一度植え付けられた憎悪から抜け出すことは困難で、いかに勇気が必要とされることなのかを描いている。
ネオナチの組織から逃れようとしても、脱会は許されない。この恐るべき物語は、2003年に米国で発足したスキンヘッド集団「ヴィンランダーズ」の共同創設者ブライオン・ワイドナーの実話を基に新鋭監督ガイ・ナティーヴが、憎悪の円環から脱け出そうとする元レイシストの男を主人公にした社会派ドラマ。
後半は『悪魔の追跡』(75)のようなスリラー・アクションにすることも出来たが、それでは製作意図から逸脱してしまう。韓国映画だったらカーチェイスや銃撃戦を挿入して観客に迎合するが、本作はそういう妥協はしない。爽快感の代わりにホラーよりも恐ろしいレイシストの実態を観ることになる。
レイシズムの偏狭さ、不寛容はアメリカの不幸であり、本作の主人公の苦悩と家族を守ろうとする闘いは現在のアメリカの運動に置き換えることが可能だ。
たかちゃん

たかちゃん