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SKIN/スキンのLocDogのレビュー・感想・評価

SKIN/スキン(2019年製作の映画)
3.7
「t.A.T.u.が出たくねぇ、ということです。
控え室から出てこないと言うことです。」タモリ


t.A.T.u.というアイドルユニットを覚えているだろうか。

ロシアの2人組歌手で、一瞬だけ世界でヒットしたので日本でも少し話題になった。

が、当時のMステに出演予定だった彼らは、話題作りのために控室からでないという謎のパフォーマンスをみせ、日本では大ブーイングを浴びた。

その後、「Gomenasai(ゴメンナサイ)」という曲も作ったが、努力も虚しく砕け散った。

そんな彼らだが、日本人が反応したのは曲よりも”タトゥー”という言葉であった。

タトゥーは英語で刺青を指すということは、今では誰でも分かる言葉となっているが、当時はその言葉に馴染みがなかった。

が、このアイドルグループのおかげで日本の認知度は、ぐんと伸びたと思われる。

本作は、顔面にびっしりとタトゥーがあるネオナチの男が社会に復帰しようとする話である。

どうしても思い出すのはエドワード・ノートン主役の「アメリカン・ヒストリーX」だ。

ノートンはそのころ、昔のダスティン・ホフマンのようなよわっちいやつのイメージがあったが、
あの作品では見事に肉体改造を成功させ、ネオナチ役をこなしていた。

本作のジェイミーベルも、子役のリトル・ダンサーのイメージがあり、爽やかな青年といった印象で、やはりよわっちい。そのため作風にマッチしているのかはみるまで疑問であった。

が、これもまた見事な肉体改造で、タトゥーもさることながら非常に近寄りがたいキャラクターを演じており、俳優に掛かる負担は相当なものだろうと察する。

シリアスな内容でありながら、思いの外見やすく、キャストの演技力も相まって良い印象を受けた。

ただ実際の出来事であるから、あまりにどうこう言うつもりはないが、描かれていることが表面的であり、内面まで掘り下げれていないといった印象を受けた。

それは反ヘイト団体側の活動を掘り下げることや、ブライアンのレイシストとしての活動をもっと描くことで、メッセージ性を高めることが出来たのではと思う。

ただ、そういった社会派な部分を強めると、却って見づらい映画になるといった側面もあるため、
間口を広げるという意味ではこちらのほうがいいのかもしれない。

タトゥーをいれる理由は単にアートとしてであったり、地位や所属をあらわしたりといろいろだが、誰でも簡単に入れることが出来る。

そういった自分の表現を私は否定しない。

それはタトゥーでなくとも、こういった映画のレビューであったり、なんらかの創作物であったりしてもだ。

ただそれを他人に受け入れてもらうというのは何倍も難しく、ときにはタトゥーを消すときのように苦痛を伴うということを忘れてはいけない。
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