島袋健太郎

SKIN/スキンの島袋健太郎のレビュー・感想・評価

SKIN/スキン(2019年製作の映画)
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「短編」とは全く異なる物語。でありながらも共通している点も散見される。そのアンビバレントなバランスもなかなか良かった。
ただこちらは、冒頭に明示されるように「実話くさい」世界観と雰囲気が強い。

もちろん、テーマ性とストーリーテリングの力量の高さは一定水準以上の面白さは担保されていて。物語のテンポや構成自体に緩みはない。
映画としての充分な面白さはあるのだけれど、実録的な展開から、他の映画との既視感や、悪く言ってしまえば「普通」に思えてしまうところも多い。

主人公のバブズだけでなく、貧困の只中にある若者たちを搾取し、ある意味では洗脳、支配する構造もまた「アメリカ」の闇ではあり、何故にそこまで「排除」のために血道を上げるのか、という人間の業のやるせなさは、なかなかに重苦しく響いてくる。
ただその重苦しさは現実そのものである中、本作のテーマの深部がイマイチ見えて来ないのも事実。
まさにその現実の困難さこそが比重なのか、そこに「更生」の道があることへの希望なのか、そのどちらもであることに変わりはないが、そのどちらもがどうしても表層的に映ってしまう。

どうしてもバブズが、何故レイシズムに傾倒していったのか、また何故そこに決定的な罪悪感と虚しさを感じるようになったのか、あるいはジュリーやその家族に対してそこまで思い入れ、更生に進むほどの「何か」が描かれていなかったように感じる。そのためにバブズが「運の良かった人」にしか見えなかったというのもある。

ただエンドロールを観ながら、人を何人も殺したとて、ある部分では守られ、助けられ、人としての暮らしをまっとうに送ること。それによって幸福な生活を得るチャンスを与える社会、という意味で日本とアメリカでは価値観に大きな違いがあり、罪を犯したものを排除して、永遠に罰を与え続ける日本の価値観にこそ、疑問を覚えた、という意味でとても観て良かった。