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SKIN/スキンのsomaddesignのレビュー・感想・評価

SKIN/スキン(2019年製作の映画)
5.0
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2003年にアメリカで発足したスキンヘッド集団「ヴィンランダーズ」の共同創設者ブライオン・ワイドナーの実話をもとに製作。第91回アカデミー賞を受賞した短編作品を長編化した社会派ドラマ。白人至上主義者に育てられ、全身に無数のタトゥーを入れたブライオン。シングルマザーのジュリーと出会ったブライオンは、これまでの憎悪と暴力に満ちた自身の悪行の数々を悔い、新たな人生を始めようと決意する。

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実在のブライオン・ワイドナーを追った2011年のMSNBCのTVドキュメンタリー「Erasing Hate」に着想を得た本作。監督のガイ・ナティーブは妻で女優のジェイミー・レイ・ニューマンの助言により、まずは出資を募ることを目的に、人種差別を題材にした「SKIN」を製作。結果として2019年に「アカデミー短編映画賞」を受賞し、それを足掛かりに物語や設定を一新した同タイトルの長編映画の製作に取り掛かった。

実際のブライオンさんは、ごっつい大男て印象でジェイミー・ベルみたいな優男の真逆で驚いた。ジェイミー・ベルは役作りで10kg近く増量したとか。

ブライオンさんは14才で白人至上主義団体に参加、スキンヘッドに全身タトゥーを掘り16年間団体に従事。2009年頃に脱退したものと思われる。計26回、16ヶ月に渡る除去手術は壮絶を極め、火傷と水ぶくれを繰り返していたそう。彫るより除く方がめっちゃ痛いらしいので、ホント軽々にファッション感覚でタトゥー入れるの考えたほうがいい。

スキンヘッズら白人至上主義のカルト教団・世捨て人集団みたいな暮らしぶりが見られるのが興味深い。
彼らも生まれつき差別主義者なわけじゃないって描き方。場合によっちゃ思想信条はどうでもよくて、その日の寝食目当てでホワイトトラッシュの子供達が興味本位で傾倒しちゃうケースもあるって怖い。
一度交わってしまったが最後、抜ける難しさや、抜けたところでまともに仕事をして自活する困難さも描く。
社会そ拒絶してた人達が再び社会に頼る皮肉だったり、それでも受け入れようとする人達の寛容さとか多様性を受け入れるハードルの高みを見た気分。どっしり重い。


ジェイミー・ベルは「リトル・ダンサー」に始まり、近作でも「ロケットマン」でエルトン・ジョンの片腕バーニー・トーピンといった優しく・穏やかな紳士のキャラの印象が強くて、スキンヘッドに全身タトゥーへの変貌ぶりにまず驚く。
キャスティングの妙っちゅーか、あんなにおっかない風貌なのに全身にから漂う捨て犬みたいな寂しげで心細げな佇まいがいい。暴力的で差別主義のゲス野郎なんだけど、自分のしてることに疑いが芽生え〜仲間からの報復を恐れ〜後悔と贖罪の間で引き裂かれていく様が痛々しくて良かった。いつも何かに怯えてるような目が、ホントは気がちっちゃいのをタトゥーで隠してるようでもあるし、スキンヘッズの空威張りの虚ろを暴いてる。


卑近なカリスマ。団体を束ねるフレッドを演じたビル・キャンプ。「ジョーカー」でアーサーを追い詰めるハゲ中年刑事役で俺にお馴染み。気に食わない相手には容赦なく、勝手な権威主義で若者たちを従える。にじみ出るクズっぷりが良かった。

ママことシャーリーンはヴェラ・ファーミガ。どっかで見覚えあるなーと思ってたら「ゴジラ KOM」のマッドサイエンティスト兼ママの人。あっちでも勝手な正義を振り回して、他人の迷惑かえりみない独善キャラだった。

アルノー・ポーティエの手による撮影は、冷え冷えとした寒色系の硬質な画面が続き、絶え間ない緊張を強いられる生活を象徴してるよう。(幸せなシーンでは一転して暖色系の温か味ある映像)

32本目
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