町尾

返校 言葉が消えた日の町尾のレビュー・感想・評価

返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)
3.9
原作のゲームもほぼ知らず、台湾の歴史的背景も簡単に調べた程度の状態で鑑賞。

物語の舞台となるのは60年代の台湾、戒厳令下でとんでもない言論統制がされている時代ということで、モロに華氏451な世界でしかもこっちは本燃やされる所か死刑にされるというディストピアぶり。しかも歴史的事実。

そんな社会のとある学校で行われる秘密の読書会とそれを密告する側との状況を謎の悪夢世界に迷い込んだパートと現実のパートを時系列ぐちゃぐちゃで描き、後半になるほど一体何が起こったのかが明らかになっていくタイプのミステリー。前半は悪夢世界の学校でホラーテイストが強いが、後半に行くほどに現実で起こった悲劇が浮き彫りになって、怖いよりも悲しい感じになっていく。

過去に起こった歴史的悲劇を忘れず、目をつぶらず、見つめ直す。それをホラーという形の一種の寓話として現代に蘇らせて今の世代に伝えている。少女が見る鏡に映る自分=体制側の怪物なってしまった自分なのかなっていうのがどんどんわかっていくが、最後に顔が鏡になった怪物から目を逸らさず見つめることで打ち勝つシーンが印象的。単純に犠牲になった人だけじゃなく密告する側になってしまった人達も犠牲者だったという描き方で救いがあるラストに熱いものがある。

現在の台湾と中国の関係を思うと、過去の出来事でなく今そこにある危機かもしないのが更に悲しい。
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