まりぃくりすてぃ

ミゾロギミツキを探してのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

ミゾロギミツキを探して(2018年製作の映画)
4.0
たくさんの人の心に届くといいな。地味だけど、佳作。

震災絡みの映画かどうかは、たぶん重要じゃない。ドキュメンタリーかセルフ再現ドラマみたく普通人ばかりが普通に出てきて、好感は持てるが地味すぎて地味死にしそうだった序盤。父役は父を、母役は母を、次女役は次女を、長女の元カレ役は元カレを、「この人物はこんなふうに言い動くんだろう」と演じてる。たいへんに自然だが、同時にぎこちなく。特に母さん役・村田美輪子さんのキャメラ慣れが足りてない。若い男女も、弾ませてる会話が弾けない。
途中、しゅはまはるみさんが霊媒師役で登場。さすがだね! 彼女の表情と不動と無言と喋りが、場をピーンと張りつめさせた。これぞプロの演技。霊媒師のいかがわしさ(100%イカサマであることの低級さ)と、客の心理への多少の支配力(何をどう言ってくれるかドキドキさせる術)を、同時にきっちり表現。撮影隊もこの時、最高ぎみ。
だが、旬の有名女優一人のきっちり演技だけではそこは終わらなかった。しゅはまさんという一級者にまるで覚醒させられたみたく、お母さん役が魂からふりしぼった真実味の溢れるリアクション。私は泣いた!
化学反応が連鎖していく。年の功? 野球場脇のシーンでは、お父さん役・松木大輔さんの言動の真実味がすごかった! お母さん役ももう安定だ。
すると、別行動で別シークエンスばかり担ってきた次女役・河合瑠果ちゃんまで、“百匹目の猿現象” みたくラストにはエモーションでスクリーンを満たしてくれた。何度も泣く私。

台本なしの完全即興映画。全言動と展開が役者たちの瞬間的判断に任されたという。そのことは、さほどのリアリティーを当初は生まなかった(と私は感じた)。「母親らしさ」や「娘らしさ」とかをそれぞれがやろうとしてるだけで。
そういう「らしさ」ばかりがリアリティーなんじゃないんだ、ほら、別の価値があるじゃん、ってことを途中から私に素敵に教えてくれた映画だった。演技の本当のリアリティーとは、「その役を通して、人間の真実(の思い)を表現すること」。
登場時のしゅはまさんは、たしかに、霊媒師らしさを巧くやってた。らしさを、しかし彼女は超えた。彼女が相談者に向けた一語一語が、霊媒師役を演じることを通しての彼女の「今この時の、奥底からの最善なる自然」だった。同時にそれは、霊媒の本質でもあった。霊媒師の尊い役目はカウンセリングなのだ。
役を、というより、「人間そのもの」を、そういうふうに一人一人が演じた。芝居をじゃなく「人として瞬間瞬間どうあるべきか、どうありたいか」を見せてくれたよ。何人もの、真心を。
監督に拍手。

彼岸島みたいな八重歯の男子が忘れがたい。
アガスティアの葉ネタ(運命云々)は不要ぎみに思えた。