一人旅

オフィシャル・シークレットの一人旅のレビュー・感想・評価

5.0
ギャヴィン・フッド監督作。

マルシア・ミッチェルとトーマス・ミッチェルが2008年に発表したノンフィクション「The Spy Who Tried to Stop a War(戦争を止めようとしたスパイ)」を南アフリカ出身のギャヴィン・フッドが映像化した実録ドラマの秀作で、キーラ・ナイトレイが信念と正義に満ちた孤高のヒロインを熱演しています。

本作は、2001年のアメリカ同時多発テロを受け、2003年にアメリカを主体とした有志連合が大量破壊兵器を隠し持つとされる中東イラクへの侵攻を行ったイラク戦争勃発の裏側を紐解いていく実録映画であります。開戦に先立ち、国連の安全保障理事会でイラクに対する軍事制裁を決議すべく、その投票権を有する複数の非常任理事国の動向を把握するために当該諸国の通信傍受を英国GCHQ(政府通信本部)に極秘依頼したアメリカ及びイギリスの不正と欺瞞の真実を、米NSAから英GCHQに極秘に送信された依頼文書を地元マスコミにリークしたGCHQ女性職員:キャサリン・ガンの視点によって詳らかに浮かび上がらせています。

違法な戦争により無実の一般市民が犠牲になることを阻止すべく、国家機密に当たる米国から英国宛ての情報をリークしたヒロインの葛藤と不屈の信念、情報を託された英オブザーバー紙の記者たちの気概とジャーナリズム、公務秘密法違反で起訴されたヒロインの弁護を担当する人権派弁護士の奔走&戦略…と、国民を裏切った国家に対して勇気をもって反旗を翻したヒロインと彼女を取り巻く関係者&関係機関の法的な闘いのゆくえを描いて、不当な手段により開戦を承認させようとしたアメリカ政府とその圧力に屈したイギリス政府の欺瞞を事実に基づき明らかにした社会派実録ポリティカルサスペンスとなっています。

主演のキーラ・ナイトレイが信念と正義で国家に立ち向かうヒロインを力強い表情で熱演していますし、オブザーバー紙記者:マット・スミス&リス・エヴァンス、弁護士:レイフ・ファインズら脇を固める実力派英国俳優の骨太な演技も見所となっています。
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