ちゅう

オフィシャル・シークレットのちゅうのレビュー・感想・評価

4.1
やっぱりこれも法外の正義か…


最近、アニメぐらいしか観る気力がなくて「PSYCHO-PASS サイコパス」というアニメを観ていた。
このアニメは作中のセリフでも言及されている通り法外の正義を扱っている。
独裁者のように振る舞うコンピューターシステムによって全てが管理されている社会で、そのシステムが犯罪者と判定できない犯罪者がいたらどうなるか。
いろいろ逡巡しながらも最後に取り得たのは法外の手段だった。

システムが違法なものを違法と判定できないとき僕らはいったいどうすべきかという問題意識がこの映画と通底していた。


イラク戦争前夜、アメリカがイラク戦争開戦についての国連決議の操作を目論みその協力をイギリスに依頼する。
そのメールをリークした一人のイギリス人女性の実話を基にしている。


アメリカやイギリスがやっていることは正義にもとるんだけど、これを違法だと断罪するのは極めて難しい。
リークしたメールは国家機密だから公にすることは守秘義務違反で違法なのだけど、そうしないと過ちが犯されてしまう。
とてもつらいジレンマがある。

違法な命令に従うのは違法で命令に抗う義務が僕たちにはある。
けれど、違法かどうかなんて簡単にわかることではないし違法かと思って命令に従わなければその違法性を証明しなければならなくなる。
そうしないと命令に抗ったことが違法として僕たちが裁かれたりするから。
僕たちのような普通の人には法を犯してまで正義を貫徹するのは非常に難しい。
主人公の同僚が言う「(私は)正しいこともしなかった」というセリフには胸を締め付けられる思いだった。

だからこそ、正義を貫徹しようとする人はすごい人なんだと認識しなければならないんだと思う。


現代社会はとても巨大なシステムで僕たちはそれに適応することで精一杯になっている。
そしてそのシステムに依存している。
システムに依存しすぎると人間はクズになってしまって、悪や不正義が目の前で起こっていたとしても自分の判断で行動することができなくなってしまう。
そして悪や不正義がそのまま野放しにされてしまえば社会は必ず腐る。
空気に支配されがちな日本社会は特に自分の判断で行動するのが難しい社会であって腐りやすいということは常に意識していなければならないのだろう。
たとえこの社会がすでに腐ってしまっているとしても。


法外の正義については今までも語られてきたし、これからも語り続けられるだろう。
であるなら、わざわざこの作品を観なくていいのかもしれないけれど、実話としての迫力とキーラナイトレイの力のこもった演技で僕はとても面白く感じた。
社会の裏側で何が行われているのか興味があるなら観ても時間の無駄ではない、と僕は思う。
ちゅう

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