Sayawasa

プリズン・サークルのSayawasaのネタバレレビュー・内容・結末

プリズン・サークル(2019年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

心理療法の可能性を感じた。

「罪を犯した人」以上のその人を見つめようと思う人間がいわゆる「一般社会」の中にどれだけいるんだろう。

一人の人間としてその人自身を受けとめたり、その人の語る言葉の手触りを噛み締め合ったり、その人の横で問いかけ、言葉を引き出し合うことがここまで人の根幹に影響を及ぼすとは思ってなかった、
その事実を真っ直ぐに映像にしてくれた坂上監督に、感謝の念を抱いた。

よりよく生きるってなんだろうな。
罪を償うって、結局なんなんだろう、どういうことなんだろう…。

人を殺すことも暴力を振るうことも
ものを盗むことも人を騙すことも
全部全部悪いんだけど
でもそれ以上にそうせざるをえない環境が、あるいは社会があるような気もして、誰よりも受刑者が傷つけられてきたこともまた一つ事実だとしたら
何をどうすることが被害者と加害者がより良く生きることなのか、端的に答えは出せないと思う。

決して加害者への共感を促進するような映画やプロットではないし、個人的に同情はしてない。
だけど、構造的な問題として捉えたときの糸口のなさを前に、なんとも言えない感情になる。

だからこそ、彼らが前を向く権利はあるし、加害を認めた上でよりよい生を享受しようとすること自体を個人的には応援したい。


受刑者の言葉ひとつひとつがきちんと論理的だったり、語彙力が高かったりで、正直犯罪を犯す人々の言語能力・表現能力がこれほどまでに高いと想定していなかった。少し驚いた。一部、法を冒した人を診ている精神科医の友達の話から膨らませていたイメージとは少し違った。
同時に自分の中のアンコンシャスバイアスがとても、とても恥ずかしくなった。


藤岡先生が出てきたからおおっと思った
(テーマ的にそうかなとは思ったけど…)
もっと彼女の授業を聴講するなどして、TCについて学ぶチャンスがあったなといまさら思う。少し残念。