いのさん

停止のいのさんのレビュー・感想・評価

停止(2019年製作の映画)
3.5
《ディストピアを照らす光》

(あらすじ)

2034年のマニラ。3年前に火山が噴火して以来、東南アジア一帯は火山灰の影響で太陽が隠れて昼も夜も闇の中。狂気の独裁者が専制政治を行い、伝染病が蔓延。多くの民衆が命を落とし、亡命を試みる者も後を絶たない。激動のフィリピン近代史に焦点を当ててきたラブ・ディアスが初めて挑むSFディストピア作品。第32回東京国際映画祭クロスカットアジア部門選定作品。

(感想)

4時間43分という長尺だが、長いカットの一つ一つに魅了されるような作品だ。
作品自体には、特に設定と演出にこだわってると感じた。2034年のフィリピンという設定で、火山の噴火の影響で昼でも夜の状態が続く。周りには光るドローンが飛び交い、反抗勢力を監視している。更には、常に雨が降り注ぎ、疫病も蔓延している。このこだわり抜いた設定に、昼夜ともに真っ暗であるため、常にモノトーンな配色の情景で作品が展開されていく。映像自体は最新の技術を使っているわけではないが、近未来のフィリピンをディストピアとして描いていることで、現実との対比や急速に発展する東南アジアの未来を悲劇的に描いた社会的風刺も含んだ作品に思えた。
4時間43分という長尺ではあるが、アジアを代表する映画の一つであると確信した。劇場で一度体験していただきたい。
いのさん

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