ぶみ

水曜日が消えたのぶみのレビュー・感想・評価

水曜日が消えた(2020年製作の映画)
3.5
吉野耕平監督、脚本、中村倫也主演によるドラマ。
少年時代の交通事故の後遺症で、曜日ごとに人格が入れ替わる主人公から、水曜日の自分が消えてしまった姿を追う。
曜日ごとということで七つの人格を持つ主人公だが、物語はそのうちの火曜日視点を中心に描かれるため、今が一体いつなのだろうと混乱することはなく、非常に観やすく仕上がっている。
その主人公となる青年を中村が怪演、前述のように火曜日中心であるので、他の曜日を演じるシーンは実はあまりないのだが、それでも性格俳優としての演技はお見事。
そもそも人格が曜日ごとに入れ替わるという設定だけで、興味惹かれるものであるとともに、それをサスペンス色の強いありがちな演出とすることなく、全体的に緩く仕立て上げられた雰囲気は、なかなか稀有なもの。
何より、邦画でありがちな小説やコミックといった原作をベースとすることなく、映画オリジナルの脚本であったり、過剰な演技が誰にも見られなかったり、説明過多になってなかったりと、邦画の進むべき一つの道を感じることができる。
冒頭を始めとし、時折挿入される事故のシーンがアクセントと伏線になっているのも絶妙。
『予測不能の未体験サスペンス』として、ゴリゴリのサスペンスを煽るような予告編が残念であり、全体的に地味な印象は拭えないが、侮ることなかれ、邦画の良さが凝縮された佳作。

返します、あなたが好きだった水曜日を。

〜Gone Wednesday〜
ぶみ

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