手堅く面白かった。
本作の登場人物はリチャード・ジュエルのほか、FBIとマスメディア側もジュエルを犯人と断定した当事者のみで、あまり多くはない。
ジュエル側の視点にやや寄りがちではあるものの、イーストウッド監督らしいドライな語り口で、無実の罪を着せられているジュエルに感情移入させられるような扇情的な演出も少ないと感じた。
そのためか、ジュエルに降りかかった出来事はもちろん、FBIとマスメディア側の行動、どちらも他人事には感じられなかった。作中で起きた事件の規模には及ばずとも、個人的な利権や思い込み・偏見から他者を貶める行動をとっているようにしか見受けられない事象は、身の回りで日常的に目にする。
信じることは疑うことよりずっと難しい。ただ、自身の信義則に従って行動していきたいと改めて思った。