論旨は「先入観で一面的な見方をしては本質を見誤る」
FBI捜査官と弁護士の対比関係からテーマを示唆していて、強いメッセージ性はありながらも説明的でなく、且つ一切説教臭くない映画でした。
「人々を守りたい」という純粋な想いから法執行官への憧れを抱くリチャードにとって、FBI捜査官は最も尊敬する職。憧れを抱くからこそ捜査に協力する。
一方、FBI側はその協力的な姿勢を利用し、リチャードの性格に漬け込み、犯人に仕立てあげようとする。
法執行官のイメージも彼のなかでは崩れ落ち、さらにその憧れの存在から見下され利用される屈辱や失望は計り知れない。
それでも夢を叶え、警察官となったリチャード。冒頭にあった100ドル札のエピソードがここで効いてくるのはなんとも粋。人情小咄みたい。
しかも、警備員時代は横暴に振る舞ってたシーンと対比になっていてこれがまたニクい。痛みを知ったからこそ成長したのよね。
ただ、記者の色仕掛けエピソードは事実と異なるらしいし、お約束というか類型的な感じもあって、違和感の残るシーンでした。
前作の「運び屋」は「年を重ねても人は変われる」っていうテーマだっただけに、イーストウッドの保守的な部分が出ちゃった感じで少し残念。
でも、このシーンを除けば間違いなく傑作ですよ!