正義とは何かを問うのでは無く
真実とは何かを問うものである
この冤罪事件を複雑にしているのは、必ずしもリチャード・ジュエルが清廉潔白では無いという事である
本人はその行動の全てが正しいと思っている
しかしそれはあくまで彼が信条とする正義であって、共通言語の正義ではない
ジュエルは気持ち悪いまでに無垢であり
信条としての正義の遂行を求めている
誰しも正義では無いものも抱えていて生きている
それは善では無いだけで悪では無い
ジュエルにとっては正義では無いものはもれなく全て裁くべき対象なのである
正義では無いものに執着しすぎた彼自身がその遂行のために正義を踏み外していても彼は気づけないのである
彼は正義という信条に従っているだけだから
この冤罪事件を通して、人間社会における協調性や客観性の低さがもたらす恐ろしさを見せつけられる
冤罪報道による彼の置かれた状況は悲劇だが、
ジュエルのような無垢な存在を無意識に許容できるほど世界は他者を信用していない