穂苅太郎

リチャード・ジュエルの穂苅太郎のレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
3.9
つくづく恐ろしい90歳。衰えを知らぬといっても90歳だよ。ここまで人間って進化するものなんだ。特に80歳以降の名作オンパレードは感動を通り越して、その超人っぷりに吐きそうになるくらい。
細胞レベルでどうかしてるとしか思えない。

今作も御大の特徴であるほぼ撮り直しはしない、という撮影のテンポそのままに、あれはあれよと話しは進んでいく。スピード感が半端じゃない。

もちろんこの手法を支えるのはワンテイクで監督のイメージ以上の演技が出来る卓越した俳優陣があってこそ。ここはさすがのサム・ロックウェル、キャシー・ベイツ(もう本当に大好き)の本領発揮、面目躍如というところ。

主人公を単にイノセントとして、良きアメリカ人としておいていないところが素晴らしい。もちろん攻めるべきところはないのだが、妙に生理的な嫌悪を見るものにもたらせるキャスティングだ。悪役であるはずの美人新聞記者も完全な悪とは描いていないことと対照的に。

こういった右も左も悪も正義も共和党も民主党もマジョリティもマイノリティも、全て同じ人間として、愛に溢れる視線を、さも当たり前のように(ここが大事)送るクリントイーストウッドの最近の作品に通底しているテーマが今作でも読み取れる。
穂苅太郎

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