矢吹

雨月物語の矢吹のレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
4.0
失わねば、何もわからぬ
世の中です。

奥行きと時間の連続性を伴いながら、
劇的なショートカットもまた美しい。
それは、
子供を呼びにくるシーンの臨場感や
お風呂からの天国への移動の共存やらであって、
めちゃくちゃ良かった。
音楽も、和楽器ですかな。ぜんぶ。
正確なところは知らないけど、純和風な音で、
めちゃくちゃ盛り上げる。
日本の映画の黄金時代と、
呼ぶ人もいる時代の映画。
戦国時代のお話です。
バイオレンスやエロチシズムを直接的に描かない。この規制の中にある、表現や、セリフの美しさもまた、素晴らしい。
影や光の使い方も恐ろしいし。
妻が死ぬときの、えい、だけ気になったけど。
やはり、規制の中に、美は宿りますね。

セリフとナレーションの狭間に落ちた
妻の、
「私は三人で幸せに暮らせればそれでいいと、
思うのです。」
みたいな言葉。
あれがあるから本当に、なあ。おい。
観客が映画に引き摺り出される感じがするのよ。

雨月物語。
奇怪を現代の心に落とし込んだ
新たな物語。
人は常に変わらぬ。
歴史や時代は違っても、
いつも人がやることだ。
金と名誉と女、男。
これに溺れては、助かって、
溺れては、助かって、
時には溺れて死んでしまう。
いつの世も変わらない。
ただの恐怖、怪異じゃあない。と
万事は金か否かだな。

京マチ子さん。お目にかかるのは、
赤線地帯と羅生門から3本目ですが、
これこそをが女優か。としか言えない。

侍の成り上がりってあんなもんなんすね。
いつの世も変わらないなあ。
矢吹

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