JunichiOoya

チャンシルさんには福が多いねのJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

3.0
幽霊=自分の心の声との会話ということから最近見た『おらおらでひとりいぐも』『私をくいとめて』との繋がりを感じながら映画館へ。

見てみるとその二本より『ブルーアワーにぶっ飛ばす』との親和性を強く感じた。
「自称」売れっ子CMディレクターの夏帆は、荒んだ心で暮らしながら祖母を見舞うために里帰りする。その道中の相棒が「秘密の友達」清浦=シム・ウンギョン=夏帆自身。(ま、幽霊みたいなもん)

一応、夏帆は結婚してるのでチャンシルとは微妙に立場が違うし、年齢も30歳と40歳と開きはあるんだけど。

コマーシャルにしろ映画にしろ、作り手のすぐそばにいながら実際には「創造」とは距離のある二人の生活。そのことを周囲は無邪気に指摘するし(「一体どんな仕事なんですか? なんか中身無さそうですね」みたいな)、図星を突かれて人知れず傷つくのも、実態の無さに思いっきり気づいているのが本人自身だから。『ブルーアワー』ではラスト、夏帆は美しく清々しくシム・ウンギョンと別れる(独り立ちする)のだけれど、結局10年経ってもやっぱり別れられなくて、それどころかレスリー・チャンは、チャンシルの制作した映像に悠然と映画館で拍手を送りながらまだまだ居座る気配…。

となるとやっぱり75歳になっても幽霊との付き合いは続いていて、おまけに三人に増えて、まあそれなりに仲良くやって行くことになるんだろうな。

男性(「所謂」というカッコ付き意味での男性ね)の自分探しに比べて女性のそれは、探すにあたっての拠り所が桁違いに多くて、だから浅くならないし、側から見てておもしろくて飽きない。

『私をくいとめて』と合わせて四本立てで一度に見たいな。
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