☆☆☆★★★
映画が始まり、延々と続く淡々とした映像を見ながら少しばかり戸惑っていた。
スクリーンに映っていた若い女の子の姿は、まるで昨年のコロナ禍の渦中に、自分の身の回りで起こった姿を見ている様だったのだ!
昨年の始めに母親が、舌癌を患い手術・入退院を繰り返すも。リンパ節転移した事から主治医からは「手の施しようがありません」との事で、自宅にて介護を要した。
(最期に、普段通院していた病院で息を引き取ったのは運命的では有った)
ほぼ1年間を通じて、普段母親が通院している病院と、手術・通院した病院の往復。セカンドオピニオンを依頼した病院や緩和ケア(ホスピス)を申請した病院の面接。
加えて。10年以上に渡って精神の病に伏す兄が、母親の病を苦にしての自◯未◯。救急病院からリハビリ病院への入退院に於ける主治医や介護士さんとの面談。
年が明けて兄は何とか退院はしたものの。数年前から施設に入っていた叔母が、看護士さんから感染ったコロナ発症。
それは何とか乗り越えたものの、急激に体力が無くなり先日亡くなった。
そして兄の介護は延々と続く。
この映画で描かれる家族に起こる不幸は、多くの家族にとって遅かれ早かれ起こる問題なのだと思う。
我が身に起こった不幸を思い出すに。この作品に描かれているよりは遥かに多くの出来事。病院内で見かけた不思議な人達のエピソードが、自分の心の中に刻まれている。
不謹慎ながら、それら多くのエピソードを重ねて行けば「これは1本の映画になるな!」と、思わなかった…事はない💧
ヒロインの女の子はまだ若い。
世の中の汚い部分を器用にすり抜けて来たおっさんと比べたなら。この女の子の様に、純真な心の隙間に入り込み、辛い気持ちを起こさせる不幸の感染であり運命は身につまされる思いでした。
映画の始めの頃は、単に淡々とした映像でしたが。終盤に至り、その胸の内が痛いくらいに理解出来るだけに…。
映画の最後に見せた彼女の姿。
そこには、自分も経験した毎夜襲って来る感情の爆発がそこには描かれていた。
〝 井戸も大きなダム湖も水は枯れてしまうが、
人間の涙は絶対に枯れないんですよね〜 〟
2021年2月27日 ユーロスペース/シアター2