ぶみ

夏時間のぶみのレビュー・感想・評価

夏時間(2019年製作の映画)
4.0
ユン・ダンビ監督、脚本、チェ・ジョンウン、ヤン・フンジュ等の共演による韓国製作のドラマ。
夏休みに、祖父の家に引っ越した家族の姿を描く。
主人公となる少女オクジュをジョンウン、その弟ドンジュをパク・スンジュンが演じているが、本当の姉弟かと見間違うばかりの自然な表情を見せてくれている。
そこに、事業に失敗した父、離婚寸前の叔母、無口な祖父が加わり、夏の日々が優しい映像と音楽で紡がれていく。
映画らしい何かが描かれるわけではないものの、家族にとっては大きな出来事が終盤に巻き起こることとなり、終始少ない台詞で家族の様々な感情が表現されているが、これ見よがし感がないのは素晴らしいところ。
何より、初夏なのか晩夏なのかはわからないが、茹だるような暑さを感じさせる灼熱の夏ではなく、窓を開けて微睡むことができるくらいの夏の雰囲気が醸し出され、湿っぽさがないのに加え、蚊帳や西瓜、黄昏時に坂道を駆ける自転車等々、日本の夏にも共通するような日々の光景が何とも言えないノスタルジーを感じさせてくれる。
また、英題が『Moving On』であり、原題が『姉弟の夏の夜』となっているところを、単に『夏の夜』とせずに『夏時間』とした邦題も秀逸。
ある家族の夏の日常と心情が繊細かつ優しい映像で切り取られ、観た後に爽やかな夏の風が心を吹き抜ける良作。

北風が吹くと、いつも切なくなるから。
ぶみ

ぶみ