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夏時間のMのレビュー・感想・評価

夏時間(2019年製作の映画)
4.8
すごく良かった。
説明的でなくて、美化されてもいなくて。昨日観た「あのこは貴族」が非常に説明的な映画だったので(それは良さでもあったけど)いっそう浸透したように思った。家族のあいだの関係をあそこまでリアルに演じられるってなにごとだろう、すごい。

夏休みのあんまりやることのない空っぽの気だるさみたいな感じとか、久々に会ったおじいちゃんとの距離感とか、中年の兄妹の会話の間合いとか
そういう曖昧なものに無理に言葉を与えずにただ映している感じがとても良かった。家族って、たいていわかりやすいキャッチコピーが似合うものではない。

なにより弟がもうたまらなく良かった。最初はあの子の光が救いだなと思って、途中からはその明るさによって泣かされた。兄の小さい頃の写真の姿に似てると思ってしまってからもうだめだった。何歳だろうか。あの俳優はすごい。

ほかの映画なら最後にもうすこしシーンを足してもおかしくなさそうだけど、この映画はかえってその感じが良かった気がした。子どもの頃の夏休みの虚ろな白さみたいなものは、ほかの時期からは時間的にも空間的にもぽっかり浮いたような感じがしていたのを思い出した。あるいはこの映画全体が、姉が大きくなってからの追憶かもしれないと観終わって思った。
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