akubi

夏時間のakubiのレビュー・感想・評価

夏時間(2019年製作の映画)
5.0
なつかしくて、さびしくて、西日がやわらかくて、泣いてしまう。いつかのわたしのこころの深奥にふれてくるから。わたしたちはみな、安らぎの場所を求めてとぶ渡り鳥。それぞれに、まあるい卵みたいにまもられた記憶をやどして。
はじめての缶ビールの味。桃色の蚊帳。深夜の即席ラーメン。喉のおくに落ちてきた涙とチゲの味。すべてがほどけて溶けてしまいそうだったあの夜。そんなちいさなできごとが、まるでわたしじしんの記憶のように染み入って共鳴する。夢でみた忘れていた記憶みたいに。
青春のただ中に射す不条理にうちのめされても、美味しいものをたべて、噛んで飲みこんで明日からまた、生きてゆく。夢のなかで出会うあなたの記憶が、やさしくあなたを包みますように。
あーあ、おなかがすきましたね。さてなにを食べようか
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