超空間コベ

はなれ瞽女おりんの超空間コベのレビュー・感想・評価

はなれ瞽女おりん(1977年製作の映画)
4.0
ここ最近観た映画の中でも、
格別な味わいの一作でした。

特に素晴らしいのが、このジャケ。
劇中における、おりん最後の姿。
何もかも失い、ボロボロ。
その末路はもう、すぐそこに…。☆


“瞽女(ごぜ)”という存在を初めて知ったのは、
“最後の瞽女”小林ハルさん(1900~2005)
のドキュメント。

2020年には、その苦難の人生を描いた
滝沢正治監督『瞽女GOZE』の
公開も控えていて、今後この
“無形文化財”としての瞽女唄が、
ますますクローズUPされる事となるでしょう。


時代は大正。
シベリア出兵、米騒動と、暗雲情勢。
『橋のない川』と同時代の物語ですね。

「男と交わってはならぬ」という
共同体の掟を破ったおりん(岩下志麻)は
“はなれ瞽女”として、盲目の身で
ひとり生きていた。

たまたま寝宿を共にした下駄職人・
鶴川平太郎(原田芳雄)と道中を共に
する事となり、束の間の平穏を得るが…。


盲目の瞽女を演じるに当たり、
全編通し、目を閉じての演技を
見せている岩下志麻。

時に演者の方は、目線、眼力を
強力な武器にされますが、ここでは
それを封印し、目以外の全身を使って
表現をしなければならない訳です。

途中で道連れとなる、半盲の瞽女、
たま(樹木希林)。
何十年と変わらない様相に定評のある
希林さんですが、
この時の、定まらない目線演技が、
左目を失明なさっていた晩年の姿と
重なり、改めて興味深い思いです。


―――塚本信夫!
―――西田敏行!
―――安部徹!

…もう、一瞥しただけで
肉欲しか頭に無いと判る(笑)、
助平の代表選手が揃い踏み。☆
おりんに魔の触手を伸ばす。

しかしなぜか、殿山泰司先生だけが
おりんを拒絶。どうしたんだ先生…!?


「―――おりぃぃぃいん!!」
善光寺での再会シーンで、
振り絞るような悲痛の叫びで
名を呼び掛ける芳雄。

『浪人街』(1990)のクライマックスでも、
「―――おしぃぃぃいん!!」
と叫びながら大乱闘に身を投じる
芳雄が素晴らしかった。

もし女なら、一度はこの絶叫で
名を呼ばれてみたいものだ。♪


映画はこれが初出演となる、小林薫。
非情の憲兵軍曹が激ハマり。
既にアブない貫録だ。小林感ハンパ無い。☆
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