まりぃくりすてぃ

羊飼いと風船のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

羊飼いと風船(2019年製作の映画)
3.7
三脚使わなさすぎなのと、結末の “まとめ感” の平凡な拙さが「おやおや…」だったけど、チベット映画最高作(☜二作しか見てないけど)。
高原ロケのアドバンテージがけっこう衰えない。顔選びも成功してるほうで、各キャラが立たせてあるほう。“風船” を子供が膨らます長回しとか、きちんと労働場面をこなしていく父親とか、脇役カップル?の謎みとか、羊売買交渉とか、いろいろ正しそう。。
構成に雑さはあるが、“営まれている物事” たちを愛おしくも冷静ぎみに描いてる。詩的。予想通りだった子供っぽい弱い結末も、好きか嫌いかでいえば全然嫌いじゃないな。。。

チベット仏教は、こうして具体的な営みの肉づけとともに提示されてみると、とても面白いけど、ただの迷信(☜ほかの全宗教とまったく同じく)ではあるから、牧歌性を逸脱して(この映画の後半ストーリーのように)人々を不幸にしている場合には、私に嘲笑される。嘆かわしいんだよ。
人類はモタモタしすぎ。20~21世紀になってもまだ多くの者が、石器時代とまったく変わらない精神性を、安易に宗教や拝金や権威主義に捧げてる。道具や制度が飛躍的に進歩改善してるだけで、頭や心はどこにも進んでない。「神はもういない。ずっと続く魂などない。死後の世界もない。生まれ変わりなんかない。人はただ『人の嫌がることはできるだけしない。人のしてほしいことをできるだけしてあげる』をお互いに心がけるべきで、男は自制心を強めてこそ、女は利他性を伸ばしてこそ、ケダモノ以上のものとして真に調和しうる。他生物との生存競争には(しっぺ返しを受けない範囲内で)常勝しつづければいいとして、人間同士は(健全に競い合うのはいいが)争いを一切やめるべき。子供から大人になるというのは、“争わない美しい人間” になるということ。そうして『すべての人が、能力に応じて働き、必要に応じて受ける』社会を当然めざす。金貸しは、悪」程度のことは早いところ気づいて実践すればいい。気づいて少しぐらい実践したところで全人類が幸福になるわけじゃないが、猿から進化した甲斐はちょこっと増す。
その「ちょこっと」のために命を懸けることのできる人間だけで、地球の運営をやり直したい。「どうやって生き残るべきか」はもう聞きたくない。「何に命を捧げたいか」だけを語り合いたい。少なくとも、全世界の宗教家と政治家(ついでに芸術家と科学者も)は、世のため人のために文字通りに己の命を捧げてね。代わりはいくらでもいるんだし。
あと、母親というものは偉大。当たり前に。
     (訓話おわり)