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ジェントルメンのYAEPINのレビュー・感想・評価

ジェントルメン(2019年製作の映画)
4.8
おかえりガイ・リッチー!

『ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』でデビューしたガイ・リッチーが、ハリウッドで得たビッグバジェットを背負ってロンドンの下町に帰ってきた。

『ロック・ストック〜』や『スナッチ』で登場したコックニーやパイキーがチラつきつつ、2作より舞台も取引金額の規模も大きくなっており、よく分からない成長のようなものを感じてしまった。
『シンエヴァ』を観た時のような感動に近い。

例えばマシュー・マコノヒー演じる大麻王が自身の農園を練り歩くシーンは、完全に『ロック・ストック〜』でチンピラ大学生がアパートの自室で大麻を栽培しているシーンを想起させる。
一方で、今回の農園が後者よりも恐ろしく広大で、経営システムが磐石に確立されている点に、ガイ・リッチーの監督としての活躍がリンクしているようだ。

ガイ・リッチー作品は、トリッキーでアクティブなカメラワークと、オールディーズロックの上に成り立つ巧妙な群像劇が特徴だが、今作では自作ヒップホップをYouTubeにアップするような若者が登場する。
所々で「老いぼれの時代は終わったんだ!」といったセリフが登場し、大麻で財を成したマシュー・マコノヒーやのし上がった新聞王と対立する。
ああ、ガイ・リッチーも老害と言われるような時代なのか、とふと悲しくなるが、マシュー・マコノヒーもこの作品自体も、いきがった若者を利用してちゃっかりと美味しいところを全部持っていくようなスタイルがかっこよかった。

御歳60歳のヒュー・グラントがキレキレで素晴らしかった。
『パディントン』でも悪役を演じていたが、私の中では永遠に『ノッティングヒルの恋人』での好青年で記憶が止まっている。
逆に言えば、近年はキャリアとして下火な雰囲気だったが、せこくて気取り屋で、下ネタ好きな胡散臭いオヤジ役がとても似合っていた。
コックニーも使いこなしていて新鮮だった。

コリン・ファレルは、ヒップホップチンピラ集団の所属するボクシングジムのコーチを演じているが、ガイ・リッチー作品ならではの役どころだった。
登場から並々ならぬ雰囲気で「ただもんじゃない」感じを匂わせつつ、特に裏も表もない人物で笑ってしまった。
『ロック・ストック〜』のヴィニー・ジョーンズ然り、腕っ節が強くてコワモテなのに、ボスにしっかり従順なキャラクターが本当に愛らしい。

ガイ・リッチーはタランティーノよりデビューが少し後で、作りやテーマから亜種扱いされがちだが、何よりこのキャラクターの愛らしさが傑出している。
裏社会でのさばるギャングのはずだが、みな一癖二癖抱えており、肝心なところで人間臭くて、それがなんとも間抜けで応援したくなる。台詞も所々で韻が踏まれていて、落語の面白さに近いかもしれない。
(タランティーノのキャラクターは少し腹の底が読めない感じが怖い)

脚本を少し捻りすぎて、前半がまどろっこしい部分はあった。