松井の天井直撃ホームラン

春江水暖~しゅんこうすいだんの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

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☆☆☆☆

何の予備知識なしで、ただ評判の良さ➕どうやら長回しのカメラが凄い…って事だけは伝わって来た。

ある程度はドキュメントタッチなのかな?と思っていたら、思いっきり劇映画でしたなあ〜。
しかしこれ、中国国内の中でも有名な俳優さんが演じているのだろうか?観ていてそんな感じがしないくらいに、皆んなが自然な家族そのものに見えました。

注目していた長回しだったけれど、思いのほか全編を通して短いショットの切り返しが多かった気がします。
勿論、超絶な長回しも有って。特に前半での、河岸を延々と流れて行くショットは確かに凄かった。
後半にも河岸を流れ行くショットが有り。この時の移りゆく時代の流れで生まれた新しい高層ビル群と、対比して朽ち果てて行くこれまでのアパート群が一緒に映る場面は忘れ難いショットの1つです。

映画は、この移り行く中国社会の中で。必死に対応して行こうとする、ある1つの家族の生活の変化を中心に描かれていました。

長男としての自覚から家族想いの家族には年頃の娘が。
一見すると、1番生活が困窮していそうな次男夫婦は、実に堅実な生活を営み。お金が必要…と感じたその時には。特にケチる事もなく使うしっかり夫婦。
障害を持つ子供を抱える三男は、常に人生一発逆転を目論むギャンブル男。
そして四男は、何時もこの家族の中では流れに身も任せるだけの静かな男、、、なのだが。

そんな四兄弟を産んだ母親が…と言ったところから映画は始まり。そしてその母親が、自身抱える病から〜と同時に。長男夫婦の娘に結婚相手が生まれるドラマが縦軸とすれば。四兄弟それぞれが抱える悩みであり、問題が浮き彫りになる横軸が絡み合いながら、あっという間にエンディングへとなだれ込んて行きました。

「今は昔とはもう違う」

何かと新しい世の中に対して言いたくなるのは古い世代の愚痴であり、凝り固まってしまっている意識の考え方。
それを若い男女はただ黙って聞いて受け取るしかなかった。
そんな旧態依然な家族の姿を、見守っていた母親が静かな怒りを見せた時。スクリーンを見つめていたこちらの胸には、崇高なる感動が湧き上がって来ました。

〝 新しい社会に溶け込んで、変わっていかなけばならない 〟

その意識の変わり方を促したのは、母親であり悠久なる大河の流れだったのです。

映画の最後は、言ってみれば《輪廻転生》とゆう考え方の1つと言って良いのかも知れません。
人間はいつの日にか朽ち果てては死んでいく。そしてまた新しい家族が生まれ、家族には新たな歴史が刻まれて行く。

その刹那…こ、こ、これは?

※ 1 ひょっとして…我々は、今観たのはとんでもない大河ドラマのほんの序章に過ぎなかったのを知るのだった。

2021年3月7日 キネマ旬報シアター/スクリーン1