【うつろいゆく風景】
移り行く中国の風景がとても美しく印象的な作品である。
高度経済成長に沸く中国には、古きものと新しきものが混在している。
しかし、再開発が進むと、次第に古きものは忘れ去られてゆき、記憶の彼方へと追いやられてしまう。
当然風景等は分かりやすく変化していくが、変わりゆくのは何も目に見えるものだけではない。
人の心や家族のあり方も、また変わることを止められないのである。
この作品では、伝統的な中国の家族が、世の中の変化と共に変わってゆく様が、風景等の変化と同時進行の形で描かれている。
それはとても懐かしく、とても虚しい響きを、観る者の胸に刻んでいく。
それは決して戻ることの無い時間の足音なのかもしれない。
恐らく人々はやがて気がつく。古き良きものの素晴らしさに。
しかし、その時には古き良きものは既に失われている。
彼らは必死にそれを復刻しようとするだろう。
しかし残念ながら、それは既に元々存在していたのとは別物なのである。
我々日本人は既にそれを経験している。故に分かる。
そして、中国人もやがて気が付くであろう。
歴史は虚しく繰り返すのであるから。