井葉

劇場版 おいしい給食 Final Battleの井葉のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

 ドラマ版は全部観たわけではないのだけど、かなり良かったので鑑賞。しかし、これは本当に痺れた。

 まず脚本が本当に巧みだ。端々の伏線はきっちり後に意味を持って回収されていく。その手腕の鮮やかさが気持ちがいい。
 冒頭で個性を尊重するという現代的な価値観と規定概念を守るという旧世代的な価値観の衝突というのが提示され、それが全体を貫くテーマになっていると思う。もちろん教育実習生と甘利田先生の対立構造だが、給食はキッチリ正しく食べるものだという甘利田先生と自由に食べる神野君の関係性もそこに重ね合わされてる。だからこそ対立する二人が給食という二人だけの世界を解放する放送室のシーンは本当に感動的だ。あの演説を聞いた人達は残りのわずかな時間をあの二人と同じような気持ちで給食に向き合うだろう。

 否応なく変わる時代、給食がなくなっても生徒達は楽しく昼食を食べる。それが家庭によって個性豊かな弁当に変わるというのは新時代のあり方を表している。そして給食=旧時代を愛する二人が校庭の隅で侘しく、しかし二人にとってはかけがえのない時間を共有して映画が終わるというのがあまりにも素晴らしく唸ってしまった。

 学校で給食を食べる、いやご飯を食べることそのものの喜び、そして変わっていく時代の寂しさ。そんなテーマを上手く描いた隠れた傑作だと思う。
井葉

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