MasaichiYaguchi

ジャッリカットゥ 牛の怒りのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.6
内容的には、屠殺されそうになった水牛が怒り狂って暴走し、それを捕らえようとする1000人の村人との戦いが繰り広げられるという至ってシンプルなものだが、斬新な映像や、神経を逆撫でするような音楽、熱を帯びた展開で唯一無二な世界観を作り出している。
そもそもの切っ掛けは、冴えない肉屋の男アントニが1頭の水牛を屠り損ねたことにあるのだが、この水牛がなかなかのもので、はじめは何人かの者で押さえ付けようとしても歯牙にもかけず、逆に村の商店を破壊し、畑を踏み荒らして村に甚大な被害を与え、村中をパニックに陥らせる。
村に大被害を与えた暴れ牛を放置させておくことも出来ず、村を挙げての捕縛作戦が始まるのだが、猫の手も借りたい村人は密売の罪で追放した荒くれ者のクッタッチャンも呼び寄せてしまう。
荒くれ牛 vs. 人だった戦いは、やがて因縁のある人々の醜い争いへとなっていく。
映画の始まりと終わりに黙示録の一節が引用されていて、本作は、リジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ監督による南インドを舞台にした水牛と人々の業による新たな黙示録なのかもしれない。