瀬口航平

ブータン 山の教室の瀬口航平のネタバレレビュー・内容・結末

ブータン 山の教室(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ずっと観たかった映画。
今のところ今年一の傑作。
みんな言ってるけども、実際にこの標高4800mの村に住んでる女の子、ペンザムちゃんがとんでもなくかわいい。かわいすぎて涙が出てくる←
そして彼女はこの村から出たことがないので、映画を観たこともなければ、カメラなどの機材も知らない、電気のことも知らない。そんな彼女の演技の素晴らしさよ。。魅力しかない、そしてめちゃうまい。。彼女の姿を観るためだけにお金払っても良い。。
そして、劇中では父は飲んだくれ、母はいない、離婚していて、祖母と暮らしてるという設定は、実際の設定と同じだそうで、そんな複雑な家庭環境が背景にあることを感じさせない無邪気さです。

ペンザムちゃんだけじゃなく、実際にこの村に住んでる人たちをほぼキャスティングしてるというのもいいですね。彼らの素朴さ、純粋さがそのまま現れてる。

歌も素晴らしい。
万物に捧げてる、ウシみたいに、わたしはただ鳴いてるだけ、というセリフが深く沁みます。
現世や来世の話、永遠の絆というセリフが雄大すぎる自然を背景に語られますが、こんな大自然といっしょに語られると、全然ふわふわしたセリフにはならないですね。。非常に地に足のついた現実的なセリフにすら聞こえてきます。

教育って、本来する側もされる側も、楽しいものなんだろうな、と見てて思いました。

意外とユーモアのある映画で、笑えるのもよかったです。

ただ、一つだけ、主人公が、ぼくは前世はヤク飼いだったのかもですね。と言うのに対して、村長が、ヤク飼いじゃない、あなたはヤクだというセリフに対して、ぼくも含めて場内笑いに包まれたのですが、監督はここは笑いを意図していなかったように思いました。
ヤクというのはウシ科の動物で、この村の方々にとってほんとに大事な動物だそうです。あなたはほんとうに私達にとって大切な人です、という至って真面目な意味のセリフなのですが、ここで笑ってしまったおれは、無意識に動物を人間より下に見ているがゆえに生まれた笑いのような気がしました。
良い気付きが得られてよかったです。

ブータンは、世界で一番幸福な国とのことですし、それを国全体も推進しているようですが、近代化の波に押されて、いろいろ葛藤も生まれてるそうです。
監督が、100年前の日本もまさにブータンのような国だったんじゃないかと言っていて、世界的に見ても、あまり幸福な国とは今では言えなくなってしまってる日本の今を顧みました。
時代の変化に追われて、何を置き去りにしてしまったのか、一歩立ち止まって考えさせてくれる、素晴らしい映画でした。
文句なしで☆5です。
瀬口航平

瀬口航平