夕霧花園の作品情報・感想・評価 - 4ページ目

「夕霧花園」に投稿された感想・評価

マレーシアの作家タン・トゥアンエンの小説「The Garden of Evening Mists」を、台湾のトム・リン監督がマレーシアのリー・シンジエと阿部寛さんの共演で映画化した本作は、戦時中の日本軍の非道を織り交ぜ、敵対する関係にありながらも日本の文化や伝統を通して惹かれ合う男女の姿を繊細に紡いでいく。
第二次世界大戦後のイギリス占領下のマレーシアを舞台に、中国系マレーシア人のテオ・ユンリンは、旧日本軍に捕らえられ慰安婦にさせられて死んでいった妹がいて、彼女は自分だけが生き残った罪悪感と妹を助けられなった後悔で日々苦しめられている。
亡くなった妹の「美しい日本式の庭園を造る」という夢を実現しようと、日本の皇居庭師だった中村有朋を訪ね、何とか彼から協力を得ようとする。
憎きべき日本人に頼むのは不本意だったが、ユンリンは妹の夢のために有朋の庭造りの手助けに励むことになる。
しかし、寡黙でミステリアス、そして庭を愛する有朋と交流していく内に、彼女は次第に惹かれていく。
本作は、メインとなる戦後の50年代、戦時中の40年代、そして現在である80年代と3つの時間軸で物語が展開する。
この3つの舞台で、ユンリンの日本人に対する思い、特に有朋へのもの、それは恋と言っていいものに変わっていく。
この作品には3つの謎があり、それを3つの時間軸で紐解くラブサスペンス物でもある。
謎の1つは庭師である有朋は日本軍のスパイなのかということ、2つ目は戦時中に日本軍が隠したという埋蔵金はあるのか、そして最後にユンリンの妹が亡くなった収容所は何処だったのか?
これらの謎が、終盤でのユンリンの或る気付きで一気に氷解する。
本作は、戦争における悪者と善人、罪と罰を単純に描くというものではなく、戦争で傷ついた心を持つ男女が愛を通して理解し、許し合うラブストーリーだと思う。
ユカ

ユカの感想・評価

3.9
マレーシアとの歴史的背景については語るのはやめておきます

戦争の捕虜、という恐ろしい描写もある

美しい風景、緑の濃さ、そして霧の描写が印象的な映画

阿部寛さんの目の演技に引き込まれてしまった
ユンリン役の方も綺麗で迫力があって素敵でした

最後は涙

台湾の監督なのですね

公平な目で撮ってくださってました
めんま

めんまの感想・評価

4.0
マレーシアを舞台に、第二次世界大戦中〜戦後の人間模様を描く作品。

純粋に、素晴らしい構成だと思う。

掘り下げると、現実的な観点では疑問は出てしまうのはさておき、芸術、美景、美徳、尊重等のポジティブなものから、憎悪、怨恨等のネガティブなものまで、対比のさせ方が見事だった。

母国の残虐な行為の一部の史実を目の当たりにした時、何を思い、何を感じるか。
当然、各兵士にも選択肢は多くはなかったのだろうが、何が正解であったのか、改めて考えさせられた。

来月8/15にて戦後76年となる。

日頃から、考えることは難しいけれど、せめてこのタイミングには、もう一度戦争や平和の定義、史実を振り返り、戒めとしたい。
ワンコ

ワンコの感想・評価

4.2
【借りものではない愛情】

僕達は、きっと、様々なものを借りて、この世界で生きているのだ。

この作品は、借景の日本式庭園だけではなく、無常という宗教観、さらに、ユンリンの華奢な背中の刺青に残した余白などを通じて、外国人が興味を示したり、理解しようとする日本の精神性を提示し、太平洋戦争の戦中・戦後を通じて、有朋とユンリンの深い愛情を見つめる作品だ。

強制的に連行された女性で慰安所を作ることは国際条約で禁じられていた行為だ。
敗戦が明らかになると証拠隠滅を図るために、慰安所となっていた修道院は爆破され、慰安婦も殺害された。
これが物語のベースだと思う。

(以下ネタバレ)

このようにして、妹を亡くしたユンリン。

自身は逃亡し、かろうじて命を繋いだが、妹の遺言、つまり、日本式の庭園の造園を実行するために、戦後、帰国せずに夕霧の造園を続ける有朋のところに通うようになる。

有朋は兵士ではないが、何かを知っているように思える謎の多い人物だ。

ある日、夕霧という名の庭と、ユンリンの背中に刺青を残して、有朋は姿を消す。

時代を経て、夕霧に残された四つの大きな石からユンリンの背中の刺青に残されたメッセージが読み取れるようになり、そして、妹の遺骨の眠る慰安所の場所もおおよそ明らかになる。
更に、有朋が、日本軍の財宝らしきものを使って、慰安所に連行されそうな少女や若い女性を救っていたことも朧げながらに見えてくる。

日本軍が太平洋戦争中に行った残虐な行為は決して許されるようなものではない。

しかし、ドイツやイタリアでも一般の市民が、ユダヤ人を匿って助けたという事実が多く残されているように、日本人も人の心を忘れず、弱い人を助けたというエピソードを仕立て、日本の精神性を表す日本式庭園を謎解きのヒントに、成就はしなかったが、時代を超えて繋がる有朋とユンリンの深い愛、つまり、借りものではない愛情を示した物語だ。

また、観る人によって、様々なメッセージも読み取れる作品でもあると思う。

ところで、有朋といえば、日本人は山縣有朋を思い浮かべる人が多いように思うが、南禅寺界隈の無鄰菴は、日本式庭園で知られた山縣有朋の別荘だったところで、一般公開もされています。

また、その近所には、金地院さんがあって、小堀遠州の鶴亀の庭が素晴らしいので、ぜひ足を運んでください。

もし、日本式庭園に興味があれば、祥伝社の新書「日本の10大庭園」がおすすめです。

長谷川等伯の作品に特徴的な余白が、少し意味が異なるように感じますが、謎解きのヒントに取り上げられたり、好感の持てる作品だと思いました。
sasha2021

sasha2021の感想・評価

4.4
●憎と愛の共存●
日本の残虐な戦争犯罪の記憶、消えない嫌疑と憎しみ、そして同居する恋心。これはある意味で衝撃だった、、、日本がしてきた知らなかったじゃ済まされない罪深い戦争犯罪(慰安婦など)と、日本軍捕虜だったマレーシア女性と天皇御用達の庭師(阿部寛)の禁断の恋と彼女の中で消えない傷との葛藤。特に日本軍に妹を残虐に殺され、自らも酷い虐待をうけたユンリンが自分たちを傷つけた日本人の男(阿部寛)とのセックスシーンは衝撃。阿部寛の頬っぺたをばしばし叩きながら行為をするという憎と愛の共存表現には驚いた。
日本を強く憎みながらもかつて妹が愛した日本庭園の魅力に惹かれたり、有朋(阿部寛)に罪があるわけではないが日本人男と恋をしているという強い葛藤やアンジェリカリーの優美な表情の中に含まれた狂気と憎しみがひしひしと伝わりとてもつらかった。
序盤では第二次世界大戦の大きな傷跡(戦争犯罪者の絞首刑、日本軍捕虜への虐待や強姦)に触れ、庭師と出会ったことで残虐な強姦魔、殺戮者としてみなしていたへの感情の変化の描写が素晴らしい。慰安婦とか難しいテーマを扱う最大限の配慮と努力が感じられ、同時にそれだけじゃない日本庭園とか入れ墨、"借景"を取り入れることで日本軍の残虐さと庭師有朋の気高さや独立性を表現していて、同時に高い芸術性を感じられる奥行きのある作品でした。
アンジェリカリーと阿部寛、二人の陶磁器と彫刻のような美貌を見ていると先ほど見た残虐さも忘れてただ結ばれてほしいと思ちゃいました。
sonozy

sonozyの感想・評価

3.5
台湾出身のトム・リン監督作。
1940年代、太平洋戦争下、日本軍に攻略されたマレーシアが舞台。
19歳の妹テオ・ユンホン(セレーヌ・リム)と二人、日本軍の捕虜になり、残虐な扱いを受けた24歳の主人公テオ・ユンリン(リー・シンジェ)。
降伏する直前の日本軍に妹を含む捕虜たちは殺され、一人逃亡し生き延びる。

戦後1950年代、30代となったユンリンは、亡き妹の夢だった日本庭園づくりに挑むべく、美しい茶畑が広がるキャメロンハイランドの「夕霧(Evening Mists)」という名の庭園に住む孤高の庭師・中村有朋(阿部寛)を訪ね、見習いの一人となる・・・

1980年代、マレーシアで史上二人目の女性裁判官となった60代のユンリン(シルヴィア・チャン)は、中村がとある財宝にまつわるスパイとして指弾されているのを知り、彼の潔白を証明する証拠を探すためキャメロンハイランドを訪れる。

1940年代、1950年代、1980年代、3つの時間軸をまたぐ、テオ・ユンリンと中村有朋の物語。

妹を殺した日本人への恨み、自分だけが生き長らえた自責の念を抱えながら、中村の庭づくりへの姿勢・思想に惹かれていくユンリン。二人の同居生活が始まる。

彫り師でもある中村は、日本軍の暴行による大きな傷があるユンリンの背中全体に刺青する事を提案する。。

凛とした美しさのユンリン役のリー・シンジェ、英語セリフで孤高の庭師・中村有朋を演じた阿部寛。「夕霧庭園(花園は中国語で庭園の意味)」での二人の時間・移ろう情感が良かった。

太平洋戦争下での日本軍の非道・蛮行のシーンは心苦しいばかりでした。。

金馬奨: 9部門ノミネート。Best Makeup & Costume Design受賞

英語字幕にて
な

なの感想・評価

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第二次世界大戦中の強制労働のシーンは、見るのが辛い場面も多かったけど、それが事実なのだと思うと忘れてはいけないことだと思った。

結局、阿部さんはスパイだったのかわからなかった...
日本映画ではなかなかお目にかかれない従軍慰安婦さん/強制労働者さんのお話。こんな酷い目にあっているのに、マレーシアの皆さんは日本の事が好きって言ってくれる人が多くて、その懐の深さに涙。美しくて悲しい映画です。
これをみて、加害者としての日本をもっと知らないといけないと思った
Taul

Taulの感想・評価

3.0
『夕霧花園 』鑑賞。マレーシアでの戦争の時代の禁断の愛。リー・シンジエの大きな瞳にその痛みと希望が映るかのよう。阿部寛はもう佇まいで活きる。日本人としては辛い場面もあるが丁寧な心理描写と大胆な作劇で国や文化、時代を超えるドラマを描き切った。忘れられない一作になりそう。

#OAFF2020

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