daisuke

戦争と女の顔のdaisukeのレビュー・感想・評価

戦争と女の顔(2019年製作の映画)
3.5
戦後1945年の露・レニングラード。元女性兵の看護師イーヤは、PTSDを発症しながらも、子供を育てていた。そんな中、子供の実母であり戦友の女性兵マーシャが帰還する...

女性目線の戦後の世界。全体を通して、何か違和感を感じる作品でした。おそらく、その正体は"異常が日常化"していることかなと。

例えば、イーヤがPTSDで体が硬直していても、誰も素知らぬ顔をしている。また、息子が亡くなっても慌てる様子もなく、イーヤに妊娠を迫るマーシャ。異常に慣れたことで、異常であることに誰も気づいていない。

戦地での行動が一切描かれないので、どんな壮絶な体験をしたか、想像するしかない。それでも、人の性格や考え方をここまで大きく変えてしまう戦争とは、一体何だろう?

ソ連は戦勝国ですが、勝とうが負けようが戦争で残るのは傷跡だけ。これほど虚しいものはありません。

他のユーザーの感想・評価

のんchan

のんchanの感想・評価

4.3
非常に気になっていたロシア映画🇷🇺
2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの『戦争は女の顔をしていない』が原案。

脚本・監督はロシアの新鋭カンテミール・バラーゴフ(1991年生まれ、ロシアから国外脱出して現在はロサンゼルス在住)
第二次世界大戦終戦から78年。スタッフ、キャストらは戦争を知らなかった若い世代だが、今、また起こっている戦争。戦争の恐ろしさを伝える作品として世の中に送り出した。その勇気を買いたい👏


舞台は1945年、終戦直後のレニングラード。2人の元女性兵士のドラマ。
1人は"のっぽ"と言われているモデル体型のイーヤ。荒廃した街の病院で自らもPTSDを抱えながら働く看護師。イーヤは親友のマーシャの息子を預かっていたが、ある晩、PTSDの発作が起こり死なせてしまう。戦地から帰還したマーシャは責めないが、自分はもう産めない身体(これは観て欲しい)の為、イーヤに代わりに子供を産んで欲しいと願う...


作品に強く感銘されられたが、驚きの方が強い。女性目線の戦争作品で、ちょっと言い尽くせない感じの内容でした。
ロシアの闇、戦争の悲惨さ、傷痍軍人らとその家族、人間性の崩壊、男尊女卑、貧富の差、運命、同性愛...あまりにも様々なテーマが重なっているが解り難くない。
上手く表現出来ないのがもどかしいが、赤と緑を効果的に使い、その対比で訴えかけてくる映像は美しく心に響くものがある✨

2人の女優も若いが存在感があり、見事に複雑な心理状態を演じていて素晴らしかった💫

プロデューサーは『ラブレス』『裁かれるは善人のみ』等のウクライナ出身のアレクサンドル・ロドニャンスキー。
「戦争を疑似体験してもらい、家族、身近な人だけでなく、他人に対しても思いやる気持ちを持って欲しい。より良い世界になって欲しい」との気持ちを込めて制作されたとのこと。

長さを感じませんでした。若い人々のエネルギーを感じ、涙が溢れてきました😢
1人でも多くの方にお勧したいです。
素晴らしい作品でした🌟
むぅ

むぅの感想・評価

4.3
「あの子はきっと酷いことをされたんじゃなくて、酷いことをしたんや」

忘れられない台詞になった。
綾野剛目当てで観ていた朝ドラ『カーネーション』、主役の尾野真千子演じる糸子の幼馴染が戦争から帰ってきてPTSDに苦しむ。
それから何十年も経った後、戦争のドキュメンタリーを観たその母が呟いた台詞だった。
あやのごっ♪というご機嫌なテンションで観始め、戦争を描いた作品を観る際の心の準備が皆無だったため衝撃は大きく、戦時中を生きた糸子の人生を描く『カーネーション』は私の中で"戦争を描いた作品"という位置付けになった。
ちなみに『カーネーション』の後に、すずきりょうへっ♪と浮かれて観た『花子とアン』でも全く同じ衝撃を受ける事になる。
私の何と学ばないことか。

その2作とは違い、心の準備だけはしっかりして挑んだ今作。それでも。


1945年
第二次世界大戦後のソ連レニングラード
ノーベル文学賞を受賞した『戦争は女の顔をしていない』を原案とし、2人の女性が"生きる"姿を描く。


"戦後"に終わりはないということ。
人々の"戦後"と、世界の"戦後"はずっと続いていくのだということ。
それでもまだ"戦後"と思えるなら。
「"わたしたち"の戦争は終わっていない」
今作のコピーのように、まだそこにいる人、たびたび引き戻されてしまう人がいるということ。
そして今現在も戦争があるということ。

言葉が出ない。
それでも生きようとする2人を見つめるしかなかった。
いつもは、この後こうするかな?きっとこれはあのせいだな、なんでこんな事したのかな、と想像しながら映画を観る。
今回はそれが出来なかった。
『戦争は女の顔をしていない』
いつになるか分からないけど、読む。
その時にタイトルの意味を考えたい。


今日は〈国際女性デー〉で〈ミモザの日〉
ミモザの花言葉は"思いやり"
今作の2人の女性の服の色は、エンドロールの後も目に残る。そして髪の毛はミモザのような綺麗な色だったなと今思った。

戦争って何なのだろうか。
ぶん

ぶんの感想・評価

3.9
悶々とした思いで観ていたこの作品、なんでこんなに悶々するんだろうと考えてみると、こんなに酷い状態の彼女なのに誰も悪人が居ないんです。戦友か?院長か?ナンパで知り合った若い男性か?その母親か?怒りと恨みが膨らみ爆発出来ない感情。それが悶々でした。
でも最後に見つけたのは大きな「悪」。それは無くなっても尚人を苦しめ続け、そして卑怯にも姿を見せず、良き被害者をも悪人に変える恐ろしさを持っているまるで悪魔のようなものだった。

どんな形にしろ彼女たちには生きる希望を持って、こんな悪魔を忘れて欲しい
そんな思いを強く感じたラストでした。
ら

らの感想・評価

3.7
緑と赤の対比に彩られた絵画のような画面が美しい。ヘビーな物語だが、原案になったノンフィクション『戦争は女の顔をしていない』の内容を知ると、本作の脚本が極めて誠実に書かれているということがよく分かる。クィアの愛憎劇になっているのも良いし自然だ。

近年、戦争の戦闘描写そのものの悲惨さではなく「戦争が人々に何を残すか」に焦点を当てた作品を目にすることが多くなった。普遍的なメンタルヘルスの問題と接続しやすいという理由もあるだろうが、これこそが現在の社会情勢における人々のリアルな感覚であるのかもしれない。それから、世界が溜め続けてきた膿が今になって一気に表出してきたということもできる。
ライト

ライトの感想・評価

3.4
戦争について女性視点での苦悩や葛藤を描く作品。

子供を持つ身としては、あるシーンが非常にかわいそうでみてられなかった。

全体的に、ダークなトーンで物語は進むが、そのなかでもちょっとした光がみえるところもあってそれが唯一の救いだと思った。
色々と考えさせられた映画。今のウクライナ紛争がタイムリーにもなり言葉が出ない。
女性であること。兵士であったこと。女性兵士であったこと。そして、女性であったこと。
印象的な色彩を放つ綺麗な緑のドレスを着て、くるくる回る。すると裾がふわっと広がり、心が弾み、軽やかな気持ちになっていく。それが嬉しくて、楽しくて何度も何度も回る。けれど、その裾の広がりが浮き彫りにするのは女であること、そしてもう女ではなくなったこと。

ノーベル賞作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』が原作となっている本作。『戦争と女の顔』という邦題が良い。よくぞ「と」にしてくれた。

イーヤに託したはずの子供を失った上に、もう子供を産むことはできず、イーヤに「私の子供を産んで」と迫るマーシャ。自身のPTSDが原因となり、マーシャの子供を死なせてしまい、妊娠を迫るマーシャの思いに答え、彼女の主人になろうとするイーヤ。この二人の歪で互いが絡みつき合うような液状的な関係性だったものが、物語が進むにつれ輪郭線が浮かび上がっていき、戦時下・戦後の女性の諸側面を見事に映し出していく。素晴らしい作品でした。

周囲の人々はもちろんのこと、彼女たち自身ですら、自分を回復に向かわせる一歩を探ってすらいない。戦地でのトラウマを表す言葉なんてまだなかった時代では、彼女たちは治療の対象ですらない。
fleur

fleurの感想・評価

4.7
緑と赤の配色がとても綺麗。台詞が少ないので美しい映像を堪能できた。
物語はとても暗くて悲しい内容。
もう一度見たい。
Rebel

Rebelの感想・評価

1.7
観るだけ時間の無駄。

まずセリフとセリフの間延びがあまりにも長くて、ジリジリしてしまい、まったくストーリーが入ってこない。

これなら日本の漫画版の『戦争は女の顔をしていない』の方がよっぽど分かりやすく、テンポがよい。

2023.32
 あらすじを読むと戦時中におけるシスターフッド映画かと思ったけど、女性間の分断が強調されている。

 イーヤがのっぽでマーシャと目線が合わないことや、マーシャが終盤にサーシャの家族と食事をする際にサーシャの母親の対面に座ることで、構図でそれを示している。

 兵士として国や社会のシステムに組み込まれていたマーシャは、自身とイーヤを結婚や出産という社会的役割の中に押し込めようとする。

 どちらもその役割を果たすことはできなかったが、同時にその時に初めてイーヤとマーシャの間に絆が生まれる様を、二人の着てる赤と緑の服の入れ替わりで表現する。

 ほとんど手持ちカメラで撮られたドキュメンタリックなタッチでありながら、抽象的な要素が有機的に結びついてる秀作。
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