おそば屋さんのカツカレー丼

戦争と女の顔のおそば屋さんのカツカレー丼のレビュー・感想・評価

戦争と女の顔(2019年製作の映画)
5.0
女性であること。兵士であったこと。女性兵士であったこと。そして、女性であったこと。
印象的な色彩を放つ綺麗な緑のドレスを着て、くるくる回る。すると裾がふわっと広がり、心が弾み、軽やかな気持ちになっていく。それが嬉しくて、楽しくて何度も何度も回る。けれど、その裾の広がりが浮き彫りにするのは女であること、そしてもう女ではなくなったこと。

ノーベル賞作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』が原作となっている本作。『戦争と女の顔』という邦題が良い。よくぞ「と」にしてくれた。

イーヤに託したはずの子供を失った上に、もう子供を産むことはできず、イーヤに「私の子供を産んで」と迫るマーシャ。自身のPTSDが原因となり、マーシャの子供を死なせてしまい、妊娠を迫るマーシャの思いに答え、彼女の主人になろうとするイーヤ。この二人の歪で互いが絡みつき合うような液状的な関係性だったものが、物語が進むにつれ輪郭線が浮かび上がっていき、戦時下・戦後の女性の諸側面を見事に映し出していく。素晴らしい作品でした。

周囲の人々はもちろんのこと、彼女たち自身ですら、自分を回復に向かわせる一歩を探ってすらいない。戦地でのトラウマを表す言葉なんてまだなかった時代では、彼女たちは治療の対象ですらない。

他のユーザーの感想・評価

ぶん

ぶんの感想・評価

3.9
悶々とした思いで観ていたこの作品、なんでこんなに悶々するんだろうと考えてみると、こんなに酷い状態の彼女なのに誰も悪人が居ないんです。戦友か?院長か?ナンパで知り合った若い男性か?その母親か?怒りと恨みが膨らみ爆発出来ない感情。それが悶々でした。
でも最後に見つけたのは大きな「悪」。それは無くなっても尚人を苦しめ続け、そして卑怯にも姿を見せず、良き被害者をも悪人に変える恐ろしさを持っているまるで悪魔のようなものだった。

どんな形にしろ彼女たちには生きる希望を持って、こんな悪魔を忘れて欲しい
そんな思いを強く感じたラストでした。
ら

らの感想・評価

3.7
緑と赤の対比に彩られた絵画のような画面が美しい。ヘビーな物語だが、原案になったノンフィクション『戦争は女の顔をしていない』の内容を知ると、本作の脚本が極めて誠実に書かれているということがよく分かる。クィアの愛憎劇になっているのも良いし自然だ。

近年、戦争の戦闘描写そのものの悲惨さではなく「戦争が人々に何を残すか」に焦点を当てた作品を目にすることが多くなった。普遍的なメンタルヘルスの問題と接続しやすいという理由もあるだろうが、これこそが現在の社会情勢における人々のリアルな感覚であるのかもしれない。それから、世界が溜め続けてきた膿が今になって一気に表出してきたということもできる。
ライト

ライトの感想・評価

3.4
戦争について女性視点での苦悩や葛藤を描く作品。

子供を持つ身としては、あるシーンが非常にかわいそうでみてられなかった。

全体的に、ダークなトーンで物語は進むが、そのなかでもちょっとした光がみえるところもあってそれが唯一の救いだと思った。
daisuke

daisukeの感想・評価

3.5
戦後1945年の露・レニングラード。元女性兵の看護師イーヤは、PTSDを発症しながらも、子供を育てていた。そんな中、子供の実母であり戦友の女性兵マーシャが帰還する...

女性目線の戦後の世界。全体を通して、何か違和感を感じる作品でした。おそらく、その正体は"異常が日常化"していることかなと。

例えば、イーヤがPTSDで体が硬直していても、誰も素知らぬ顔をしている。また、息子が亡くなっても慌てる様子もなく、イーヤに妊娠を迫るマーシャ。異常に慣れたことで、異常であることに誰も気づいていない。

戦地での行動が一切描かれないので、どんな壮絶な体験をしたか、想像するしかない。それでも、人の性格や考え方をここまで大きく変えてしまう戦争とは、一体何だろう?

ソ連は戦勝国ですが、勝とうが負けようが戦争で残るのは傷跡だけ。これほど虚しいものはありません。
色々と考えさせられた映画。今のウクライナ紛争がタイムリーにもなり言葉が出ない。
fleur

fleurの感想・評価

4.7
緑と赤の配色がとても綺麗。台詞が少ないので美しい映像を堪能できた。
物語はとても暗くて悲しい内容。
もう一度見たい。
Rebel

Rebelの感想・評価

1.7
観るだけ時間の無駄。

まずセリフとセリフの間延びがあまりにも長くて、ジリジリしてしまい、まったくストーリーが入ってこない。

これなら日本の漫画版の『戦争は女の顔をしていない』の方がよっぽど分かりやすく、テンポがよい。

2023.32
 あらすじを読むと戦時中におけるシスターフッド映画かと思ったけど、女性間の分断が強調されている。

 イーヤがのっぽでマーシャと目線が合わないことや、マーシャが終盤にサーシャの家族と食事をする際にサーシャの母親の対面に座ることで、構図でそれを示している。

 兵士として国や社会のシステムに組み込まれていたマーシャは、自身とイーヤを結婚や出産という社会的役割の中に押し込めようとする。

 どちらもその役割を果たすことはできなかったが、同時にその時に初めてイーヤとマーシャの間に絆が生まれる様を、二人の着てる赤と緑の服の入れ替わりで表現する。

 ほとんど手持ちカメラで撮られたドキュメンタリックなタッチでありながら、抽象的な要素が有機的に結びついてる秀作。
のすけ

のすけの感想・評価

3.3
戦争を違った視点で描いた作品。
元兵士の女性二人の戦争後の人生を描く。
冒頭から画の美しさが際立っていて、まるで絵画のようだった。
作品の中で印象的に使われる緑色もいい。

「全部戦争が悪い」。戦争が無ければ‥
同じ地球人同士、何を争う必要があるのだろうか。
戦闘シーンを一切排除した作品だからこそ、戦争の重さが伝わってくる。
むんむ

むんむの感想・評価

5.0
女性視点の戦争映画。
暗くて重くて悲しい、傷だらけの心理描写が痛い。
それでいて絵画のように美しい色彩の画に惹き込まれる。
“戦後”というけど戦争に終わりはなく、苦しみは死ぬまで続く。
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おそば屋さんのカツカレー丼さんが書いた他の作品のレビュー

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5.0

初のIMAXレーザーでの観賞作品!!
カンフー×マルチバース=愛なんですね…

ベーグルは人間のメタファーだと思うんです。ベーグルの中心にある穴は、人間と言う存在が根本的に持つ穴とイコールで、その穴は
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4.1

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ドキュメンタリー風なのは良いけれど、あまりに撮影者が現
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4.5

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4.2

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めーーー
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