ベンジャミンサムナー

戦争と女の顔のベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

戦争と女の顔(2019年製作の映画)
4.0
 あらすじを読むと戦時中におけるシスターフッド映画かと思ったけど、女性間の分断が強調されている。

 イーヤがのっぽでマーシャと目線が合わないことや、マーシャが終盤にサーシャの家族と食事をする際にサーシャの母親の対面に座ることで、構図でそれを示している。

 兵士として国や社会のシステムに組み込まれていたマーシャは、自身とイーヤを結婚や出産という社会的役割の中に押し込めようとする。

 どちらもその役割を果たすことはできなかったが、同時にその時に初めてイーヤとマーシャの間に絆が生まれる様を、二人の着てる赤と緑の服の入れ替わりで表現する。

 ほとんど手持ちカメラで撮られたドキュメンタリックなタッチでありながら、抽象的な要素が有機的に結びついてる秀作。

他のユーザーの感想・評価

daisuke

daisukeの感想・評価

3.5
戦後1945年の露・レニングラード。元女性兵の看護師イーヤは、PTSDを発症しながらも、子供を育てていた。そんな中、子供の実母であり戦友の女性兵マーシャが帰還する...

女性目線の戦後の世界。全体を通して、何か違和感を感じる作品でした。おそらく、その正体は"異常が日常化"していることかなと。

例えば、イーヤがPTSDで体が硬直していても、誰も素知らぬ顔をしている。また、息子が亡くなっても慌てる様子もなく、イーヤに妊娠を迫るマーシャ。異常に慣れたことで、異常であることに誰も気づいていない。

戦地での行動が一切描かれないので、どんな壮絶な体験をしたか、想像するしかない。それでも、人の性格や考え方をここまで大きく変えてしまう戦争とは、一体何だろう?

ソ連は戦勝国ですが、勝とうが負けようが戦争で残るのは傷跡だけ。これほど虚しいものはありません。
色々と考えさせられた映画。今のウクライナ紛争がタイムリーにもなり言葉が出ない。
女性であること。兵士であったこと。女性兵士であったこと。そして、女性であったこと。
印象的な色彩を放つ綺麗な緑のドレスを着て、くるくる回る。すると裾がふわっと広がり、心が弾み、軽やかな気持ちになっていく。それが嬉しくて、楽しくて何度も何度も回る。けれど、その裾の広がりが浮き彫りにするのは女であること、そしてもう女ではなくなったこと。

ノーベル賞作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』が原作となっている本作。『戦争と女の顔』という邦題が良い。よくぞ「と」にしてくれた。

イーヤに託したはずの子供を失った上に、もう子供を産むことはできず、イーヤに「私の子供を産んで」と迫るマーシャ。自身のPTSDが原因となり、マーシャの子供を死なせてしまい、妊娠を迫るマーシャの思いに答え、彼女の主人になろうとするイーヤ。この二人の歪で互いが絡みつき合うような液状的な関係性だったものが、物語が進むにつれ輪郭線が浮かび上がっていき、戦時下・戦後の女性の諸側面を見事に映し出していく。素晴らしい作品でした。

周囲の人々はもちろんのこと、彼女たち自身ですら、自分を回復に向かわせる一歩を探ってすらいない。戦地でのトラウマを表す言葉なんてまだなかった時代では、彼女たちは治療の対象ですらない。
fleur

fleurの感想・評価

4.7
緑と赤の配色がとても綺麗。台詞が少ないので美しい映像を堪能できた。
物語はとても暗くて悲しい内容。
もう一度見たい。
Rebel

Rebelの感想・評価

1.7
観るだけ時間の無駄。

まずセリフとセリフの間延びがあまりにも長くて、ジリジリしてしまい、まったくストーリーが入ってこない。

これなら日本の漫画版の『戦争は女の顔をしていない』の方がよっぽど分かりやすく、テンポがよい。

2023.32
のすけ

のすけの感想・評価

3.3
戦争を違った視点で描いた作品。
元兵士の女性二人の戦争後の人生を描く。
冒頭から画の美しさが際立っていて、まるで絵画のようだった。
作品の中で印象的に使われる緑色もいい。

「全部戦争が悪い」。戦争が無ければ‥
同じ地球人同士、何を争う必要があるのだろうか。
戦闘シーンを一切排除した作品だからこそ、戦争の重さが伝わってくる。
むんむ

むんむの感想・評価

5.0
女性視点の戦争映画。
暗くて重くて悲しい、傷だらけの心理描写が痛い。
それでいて絵画のように美しい色彩の画に惹き込まれる。
“戦後”というけど戦争に終わりはなく、苦しみは死ぬまで続く。
独特なリアリティ。先が読めないサスペンスもある。背景には第二次大戦状況下でのソビエトの暗い環境もある。オチもそうなの⁈という流れでもあった。

緊迫した映像と緻密なシナリオ。じっくり鑑賞したい作品。
mA

mAの感想・評価

3.9
よかった
戦争など何も良いことはないと言い聞かされる130分。
この監督は今何を思うんだろう、、
レニングラードものはとても興味があった(今作にレニングラードの直接な飢えの感じは薄いが)

これはあまり見た事がないタイプのロシア映画
元女兵士というのもあまり聞かなかったが実際に多かったよう
重い題材だが映像は綺麗で明るい雰囲気が漂っていた
でも余りに生と死が身近に描いてる
コレを見た後に史実を調べたらまた見え方がかわるだろう
「戦争と女の顔」の感想・評価を全て見る

ベンジャミンサムナーさんが書いた他の作品のレビュー

ミセス・ハリス、パリへ行く(2022年製作の映画)

3.0

 人間、歳を取れば行動に対する動機が複雑していき、腰が重くなっていく。

 中年の未亡人であるエイダが「綺麗なドレスが着たい」というシンプルな動機で突き進む姿は痛快であり、歳を取っても動機はこれぐらい
>>続きを読む

長ぐつをはいたネコと9つの命(2022年製作の映画)

4.0

 『バッドガイズ』といい本作といい、ドリームワークスは『スパイダーバース』のアニメーション表現でやっていく方針なのかな?

 アクションシーンでは、体格差のある相手に対してプスが縦横無尽に飛び回りなが
>>続きを読む

長ぐつをはいたネコ(2011年製作の映画)

3.0

 ストーリーの繋がりがあるのか分からないが、新作の予習として鑑賞。

 ライド的な映像や終盤の怪獣映画的な展開等、視覚的に楽しい要素が散りばめられているが、基本的にやってることがマッチポンプなので素直
>>続きを読む

セイント・フランシス(2019年製作の映画)

3.5

 最近は中絶をめぐる内容の映画が増えてきてるが、生理の件も含めて過度に深刻にならずにあけすけに描いてるのが良い。

 子役自体は良いが、『フロリダ・プロジェクト』や『悲しみに、こんにちは』等のように、
>>続きを読む

線は、僕を描く(2022年製作の映画)

3.0

 三浦友和や江口洋介が絵を描く(揮毫)シーンは水墨画のダイナミズムが即物的に表現されているが、「絵に"命"があるかどうか」とか「"自分の線"を描けてるか」とか、目指すところが観念的でノリきれない。>>続きを読む

シャザム!~神々の怒り〜(2023年製作の映画)

3.0

 クライマックスで主人公がメインヴィランと戦ってる間に、他の仲間たちが大量発生してる雑魚敵を片付ける。
 
 この流れ、『ブラックアダム』で観たばっかだし。
 っていうかコスチュームと能力も『ブラック
>>続きを読む