平野レミゼラブル

百万長者と結婚する方法の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

百万長者と結婚する方法(1953年製作の映画)
3.2
【眼鏡ッ娘から眼鏡を奪うより眼鏡ごと愛する方が良いに決まっている】
≪N.E.M.新録版鑑賞感想≫
(2020/8/29鑑賞)
■キャスト
シャッツィ・ペイジ:大谷育江
ロコ・デンプシー:ファイルーズあい
ポーラ・デベヴォア:Lynn
トム・ブルックマン:落合福嗣
https://twitter.com/NEMofficial3/status/1242075826499141633

今期放送のラブコメアニメかよ!!!

名作洋画を現在の人気声優で吹き替える「New Era Movie(N.E.M.)」プロジェクトの第4弾は特に当世風と言っても良いようなメンツになっていますね。
ただ本作はN.E.M.プロジェクトの中でも一番気楽そのものなゆるい映画ですし、そのラブがコメった雰囲気に即したキャスティングとして物凄くハマっています。
特にポーラなんてド近眼の眼鏡ッ娘にしてドジッ娘という、50年代にして完成されたあざとい属性の塊ですよ。さらに言うと演じているのはマリリン・モンローなんで、ボンキュッボン!とグンバツのプロポーションですよ!そこにさらにLynnによる甘ったるいボイスが加わりさらにえっちく!!今年の薄い本クイーンは決まりだな!!


本作のゆるさは本当に物凄いンですよ!冒頭、オーケストラの演奏で始まるんですが、これが長い!!1時間36分のうち6分以上は演奏に費やされているという衝撃。しかも途中「あっやっと終わった…」と思ったらまた再開しますし、本当の本当に終わったと思ったらキャストクレジットが始まるという…これ演奏の最中に出しておいて良かった奴だろ!!

かつて結婚に失敗したシャッツィは、モデル仲間のポーラと、ポーラが誘った頭のネジが飛んでいるというロコの3人で玉の輿を狙います。金持ちを釣るには金持ちを装わなければ駄目だ、ということで分不相応な高級マンションを借り、家賃を払うために元の家主の高級家具を売っていくシークエンスがもう愉快。金持ちを家に誘った時には閑散とした部屋が広がっている時点で金持ちを装ってるのはバレバレだと思うんですが、それは。
そんな感じでシャッツィは策士を気取る割に結構抜けてる女性ではあるんですが、ド近眼なのに外見を気にして眼鏡を外すから日常生活に支障をきたしまくっているポーラや、マジで何を考えているのかわからないロコというアホの子2人に比べれば全然マシだという。

この辺り、吹替でもひとりベテランと言ってよいキャリアで演じていた大谷育江さんが良い味を出していましたね。若手代表のLynnやファイルーズあいとの間できっちり線引きされていたというか。大谷育江はピカチュウやチョッパーとかのマスコットだけのボイスアクターじゃないんだぜ?ちょっと疲れた影の部分もあるような大人な女性のボイスも絶品なんだぜ?
無論、Lynn、ファイルーズあい両女史も負けじと素晴らしいハマり込み。Lynnボイスは結構素のマリリンの甘ったるい雰囲気を再現していてえっちでしたし、ファイルーズあいボイスはどこか素っ頓狂なダメダメさと可愛さを両立していてまさに頭のネジの飛んだロコ・デンプシーといった感じ。この2人がボケにボケを重ねていくのがどこか愛らしい。

ポーラとロコがアホの子なのは彼女たちが見る夢にも顕著に表れていました。シャッツィが普通にテキサスの金持ちと結婚して宝石を買い漁るテンプレな夢を見ているのに対して(テキサスのイメージが大量の牛という安直さなのはこの際置いておく)、ポーラはというと純金のジェット(!)でエジプトだかどっかに飛んで、そこの風習で大量の貴金属をプレゼントしてもらうっていう絵空事めいた金持ち像の夢見てましたからね。
さらに驚くべきはロコ。金持ち関係ない食べ物の夢を見て涎を垂らします。ロコだけ一人異次元めいた疾走を続けていくのでワケわからんことになります。

まあただ、本作で一番馬鹿なのは誰なのかと言うと、実はシャッツィというのが愉快なところなんですが。百万長者と結婚することを夢見ていながら、実は目の前にその百万長者がいて、しかも好かれていることに気付かないという節穴っぷり!!
早い段階でシャッツィに言い寄るトム・ブルックマンが百万長者というのは明かされるので、タネを知っているこちらとしては「シャッツィ!そいつだよ!そいつ!!」と「志村後ろ!後ろ!!」みたいな心地で見守っているという。全体的にそんな感じで、どこか懐かしい安心できる予定調和の中でコメディが展開されていきます。
そのためオチに関しても、かなりのコテコテ感……というかまあそういう結論に落ち着くよねってとこに落ち着く予定調和の中で終わりますが、この作品で変化球とかやられても困りますし、最初から見えているオチに向かって突き進んでチャンチャン♪というのが逆に心地好いです。○印に映像が暗くなっていく昭和のフェードアウトしそうな感じ。

でも、アレだね。眼鏡ッ娘のポーラが「外見が全てじゃないよ。眼鏡をかけた君も個性的で美人だよ」と諭されて「本当に大事なのは眼鏡をかけたままのありのままの私を愛してくれる男性なのでは?」という気付きを生む展開はベタだろうとなんだろうと、映画史に残る名場面でありこの世の真理だね。眼鏡ッ娘から眼鏡を奪うより眼鏡ごと愛する方が良いに決まっている。

まあ、マリリン・モンローという美女は顔に何をかけたって可愛いに決まってんですけど!!!ズルいぞ!!!!!